古代からある素材を使って関節痛に有効な治療法を探る

歳をとるに従って、軟骨がへり、痛みをともなう関節炎を起こすことがあります。自分の周りにもそういう症状を抱えている人が何人もいますが、マサチューセッツ州のケンブリッジの医薬品開発コンサルティング会社SDGによると現時点で骨関節炎の進行を遅らせる医薬品が市場にないといいます。
自然療法で、貝(緑イ貝)の一種が軟骨の再生に役立つとして、サプリメントやグルコサミンのサプリはでていますね。
西洋医学の世界でも病気の治療が科学的療法以外に自然にあるものを使ったり、自己免疫力を高めたりする手法がここのところますます、注目されているように思います。

そんな中、古代からある”絹”の力に再注目しているバイオ企業の話(ボストングローブ10月21日)がありました。

臨床医として、関節の痛みに苦しむ患者に対して、根本的な治療のために処方できる薬がないことをきっかけに研究をはじめ絹に注目して2013年に、Cocoon Biotech Inc.という会社を設立したのツゥイード・ケント医師がいます。
絹はタンパク質と水からできていてその特性として生体適合性があり、体内にいれてもその後取り出す必要もなく、免疫反応もおきません。人体だけでなく、環境にもやさしく、食べることもできます。

絹というのはすごいですね、絹のコップを作れば、そのまま自然に戻りますし、もう少し改良して、食品パッケージにすれば、そのまま食べることもできてしまうといいます。
そんな絹でツゥイード・ケント医師は、関節のジョイント部分に、球状の絹を注射で埋め込むという治療を考え出しました。症状を和らげるとともに、進行を遅らせるように、現在プロトタイプもできているそう。

それにしても、ここでは、臨床医が自分の経験をもとに起業するケースをよくききますが、そういった設備、環境が整っているのもボストンのすごいところだと思います。

病気に対する治療法がこれから変わっていくーTEDx Cambridge 2015 Spring よりー

TEDxケンブリッジspring が先週行われました。今回のトークは7人でオペラ歌手に、スポーツランナー、ナーサリースクールの運営者、ニューロナノテクノロジスト、ケミカルエンジニアと非常に広分野にわたり、理論よりも現実的に前線で問題解決にあたっている人たちが多かったように思います。ボストンでは世界の最先端の研究をしている人たちが多いせいか、研究者や教授クラスの方たちの話も多いのですが、分野が広かったためか、きいているほうも時間があっという間にすぎました。

その中で、今回自分の印象に残った話はマイクロバイオーム(細菌叢(さいきんそう))という人が本来もっているバクテリアを使って、新しいタイプの治療薬を作ろうとしている会社、ボストンにあるバイオ系のベンチャー企業、ベダンタ・バイオサイエンシズ(Vedanta Biosciences)の共同設立者で、同社のCOOでもあるBernat Olle氏の話でしょうか。

彼は、抗生物質を使うことなく、人が本来持っている最強の軍隊ー体内のバクテリアであるマイクロバイオームーを最大に生かし、病気を治療していくという方法で治療薬を作ろうとしています。
これにはアメリカでは抗生物質を使いすぎている、ということが背景にあるそうです。
抗生物質の良い点は、速攻性があるということだそうですが、強い薬を使うほどのその後のリバウンドもあります。
抗生物質は異物だけでなく、いい細菌も傷つけてしまうとデメリットもあります。
そこで、人が本来もっている免疫の力を使おうというわけですが、腸内細菌叢の分野では第一人者である慶應大学教授の本田賢也先生の研究を使い製品化をすすめているとのことで、ボストンで日本人研究者の研究が製品化されつつあるということに確実にグローバル化の波を感じますね。。。

日本でも近年、なんでも抗生物質をだすことに対して問題があるという認識が広がりつつあるのではないでしょうか。
今までの西洋の薬のあり方は、共存ではなく攻撃、破壊。いなくなるまでやっつける。
これはガンの治療や他の病気の治療のあり方にも大きく影響するのかなあ、と。抗がん剤で正常な細胞も傷つけるのではなく、環境と同じで自然に持っているものの力を最大限に引きださせる、サステナブルな考え方がこれからの医療の主流になってくれることを願いますね。

ted cambridge

ピッチコンペってこんな感じ。

ボストンエリアでは、しょっちゅういろんなところでピッチコンペティションをやっています。

スイス科学領事館が企画し、マスチャレンジ、ベンチャーラボが参加してハルトビジネススクールで行われたピッチコンぺをみてきました。
ベンチャーラボは毎年スイスのスタートアップ企業を20社ばかり選抜し、10日ほどかけてボストン、ニューヨークで研修を行います。ビジネススクールでコーチングをうけたり、ネットーワキングイベント、各種セミナーをうけ、アメリカのアントレプレナーシップ、ビジネスのやり方を学び、このイベントにも参加します。
ベンチャーラボのメンバーが参加するピッチコンぺはセッティングをかえて毎年行われるのですが、今回はハルトビジネススクールやマスチャレンジからの参加もあり、以前ブログでも紹介したPavlok もコンテストに参加していました。やはり、アメリカ勢はピッチがうまいですねー!

なんと今回は日本でもIPOを果たしているヒューマン・メタボローム・テクノロジーズも参加していました!こういうピッチフェスで日本の会社が(日本人が)参加しているのをみることはとても少ないので、嬉しい驚きです。ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズは本社は山形にあり、慶応大学からスピンオフした世界に誇れるオンリーワンテクノロジーを売りにしているバイオベンチャーです。

さて今回は、メドテック、バイオテック、エンジニアリング、IT/ソフトウェアと分かれてまず一次コンペをして、各分野から選ばれた代表がファイナルに進み、ファイナルでは、事前に知らされなかったお題、

”なぜあなたが、このスタートアップを率いるべきなのだと思いますか?”

について5分考える時間が与えられ、その後、指名された人が1分間でピッチをします。
通常の1分間で自社について述べるピッチより、その場でテーマを与えられて話すピッチのほうがより、その人らしさがでてみている方は面白いですが、自分がもしそこにたっていると考えると。。。やっぱり相当自分に対する自信とやっていることに確信がないと無理かも。

自分の服をレンタルできるRedress

自分の服をレンタルできるRedress

こういうピッチフェストでいつも思うのですが、B to B のビジネスとB to Cのビジネスでは一般人と専門家のジャッジの理解度は全然違うだろうなということ。特に一次審査は専門性の高いものより、誰にでも受けのいいものが選ばれる傾向にあるので、製品やサービスの中身が濃くても伝わらないということが多々あります。すでにビジネスとして軌道にのっているものが、大衆うけするとも限りません。地に足がつきつつ、夢をみさせてくれるようなものが好まれるとでもいいましょうか。。。
まあもっとも難しいビジネスをいかに誰にでもわかるように簡単にいうかがピッチの意味でもありますが。

ファイナルでは、観衆とは別にシリアルアントレプレナーや専門家からなる特別なジャッジ3人が、勝者を選びましたが、今回はどちらもDDG というヘルスケアリサーチのマーケティング会社が選ばれました。賞はスイス行きの飛行機チケット。
メドテック、バイオテック関連のスタートアップが多いのもボストンならではという感じがしますね。

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老化に対処するバイオ産業

誰にでも平等なのは、時間。そして老化というのは誰でも避けて通れないことですが、年をとると、特に膝などの関節痛や、耳が遠くなったり、目が見えにくくなったりとトラブルがでてきます。平均寿命がのびてくると、単に長生きできればいいというより、いかに健康に生きていけるかということが問題になってきます。
そしてこの高齢化に対処するためには2つの考え方があると考えられます。一つは病気を治療したり、機能しなくなった部分や壊れた部分を治す、取り替えるということ、もう一つはガンや糖尿病、アルツハイマー等の病気になりにくくして、生活の質を保ちながら延命させる、ということ。ボストングローブ1月27日には老化に対抗する製薬会社の取り組みがのっていました。

実験室においては、老化を遅らせるということは可能であるということで、アスピリンやイブプロフェン(消炎鎮痛剤 )メトフォルミン(糖尿病治療薬)には動物実験において寿命を伸ばす、効果があることが確認されています。しかし、副作用も懸念されるので実際に老化対策として人がこれらの薬をとることはすすめられていません。

年をとるということは免疫反応力の低下、ワクチンの効果が限定されることがあります
しかし、サイエンストランスレイショナルメディシンの12月の研究において、ノバルティスは腎臓ガン治療薬エベロリムス(インフルエンザの予防接種で与えられる)がインフルエンザの予防接種の効果を押し上げることを発表しました。薬が免疫力の自然の低下に対処するのを助けることができるなら、ワクチンと組み合わせて管理されれば食品医薬品局の承認を得られるかもしれません。

加齢に関するもう一つの問題は耳が聞こえなくなることです。長期間大きな音量を聞いていた場合などで、耳の中の有毛細胞が壊れると、それは自然には生まれ変わりません。よって、よりたくさんの細胞がなくなることで、どんどん耳が聞こえなくなるのです。ノバルティスはアトナル1という遺伝子の注射を耳にうつことで普通の細胞が有毛細胞のようになることができるものを研究しています。動物実験では神経細胞がもう一度繋がって耳が聞こえるようになるということがわかりました。

また、多くの老人は関節に痛みを訴えます。軟骨がすり減ることで、おこる関節痛に、ノバルティスは軟骨を再建するのを助けるであろう物質をみつけ、動物実験をしている状態ですが、薬がどれくらい投与される必要はあるかは、まだ明らかでないとのこと。

年をとればとるほど適切な運動が大切になってきます。
筋肉の衰えも老人の運動能力に影響を与える問題です。製薬会社のイーライリリーとリジェネロン社はミオスタチンというタンパク質をブロックすることで筋肉の成長を促進する治療法を開発しており、ノバルティスも独自に筋肉を強化するような薬品の開発を進めていますが、老化を防ぐということが目標というより、年をとって症状が悪化し障害がでることを防ぐ、という考え方があるようです。

この週末ボストン周辺では一晩に70cmほど雪がつもりました。雪が積もっても、マイナス10度くらいの中を、いつもとかわらず、マラソンをしている健康オタクの人達がいます。そこまでくると、かえって大丈夫?と思いますがやはり普段の生活の改善、というのが健康に長生きできる一番の秘訣かもしれませんね。

新生児のゲノムテストは広まるか?

私事ですが、去年は年末にかけて身近な人との別れ、そしてまた身近に新たな命の誕生というものがほぼ同時期にありました。不妊治療や昔だったら難しい状態での妊娠、出産ということが医学の発展で可能になったことは確実なのですが、一方個人的には、医学が発達しても人が生まれるということはやはり神の領域なんではないかと、思っているところがあります。どんなに最先端の治療や、努力してもどうにもならないこともあるのが現実です。

そしてまた、人は生まれた瞬間からある意味、死に向かって進んでいるともいえるわけで、事故や発作の場合は別としても、病気を長く患っている場合をみていると、意外と人は行く時期を自分の意思できめているのではないだろうか、という感じがしました。余命数ヶ月と言われた人が何年も生きたりできるのは薬や新しい治療方法だけが理由ではないように思えます。

もし、人が生まれた時点ですぐに将来どういう病気になる可能性があるかわかっていたら、人生の長さが変わるかもしれませんが、質は変わるでしょうか。

昨年12月に発表されたブリガムアンドウィメンズホスピタルとボストン子供病院の共同プロジェクトで行われた調査によって生まれて2日以内の新生児の親(514組)の82.7%(36%がなんらかの興味を示し、28%がとても興味を示し、18%が非常に興味を示した)がゲノムテストに興味を示しているということがわかりました。もし、そのようなテストが可能であれば、親の年齢、人種、教育のレベル、第一子か、遺伝性の病歴が家族にあるかどうかにかかわらず、大多数の親がゲノムテストをしたいと思っているということだそうです。また、これを全く拒否する、といった親もいませんでした。新生児のゲノムスクリーニングの興味に関する研究は今までにもあったそうですが、生後48時間以内の親に焦点をあてたものはありませんでした。ゲノムテストをすることによって、今ある標準のテスト以上に個人的な健康に関する情報を供給することができることになります。しかし、これにはもちろん生後すぐに親の関心と同意が必要です。

一方で、新生児の健康問題をすでに懸念している親はゲノムテストに興味を示さなかったそうです。
これはもうすでに問題を把握しているから、必要ないと思っているということでしょうか。

また調査では両親バラバラに質問に答えてもらったのですが、75%の夫婦の意見は一致していました。
より、安く、広くこのスクリーニングができるようになるために更なる調査が続けらるべきだということで、倫理委員会による確認及び、承認が得られるまで2015年の前半までに数百の新生児達が研究対象としてゲノムスクリーニングを提供される予定だそうです。

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