最後に。。。

さて、5年ほどボストンで教育やイノベーションエコノミーに関わってきましたがここで過ごす時間も残り少なくなってきました。

アメリカに来た時に、アメリカにいる時間は限られるのだから、せっかくならアメリカ人の得意なことを習おうと思いました。アメリカ人の得意なことといえば、セールス、マーケティング、ファンドレージング、コミュニケーション、、、と考えてみるとまあビジネス全般かな?と思ったことをきっかけにこの間、小さい規模でのイベントの開催からNPOのための大規模なファンドレージング、ネットワーキング、ビジネスディベロップメントとビジネス全般に関わりながらたくさんの人との交流がありました。

こうして改めて振り返ってみるとアメリカはやはり新しいことを始めるには大変適した国であると思います。いろんなところにチャンスはあり、ここでできなかったらどこでできる?というくらい環境が整っていると思います。ビザや法的にはクリアしないといけない複雑な部分が多いとしても、やる気さえあればそれを含めて支援をしてくれる体制もあります。新しいことにオープンであり、好奇心に溢れ、失敗を恐れずチャレンジする機会を与えてくれる、それがアメリカのいいところではないでしょうか。

一方、海外に出ると日本の良さを改めて感じることも多いです。最近特に増えている研修でやって来る高校生たちは皆前向きで留学を希望していたり、どうしたら英語がもっと上手くなるか、進路をどうするか、真剣に考えています。どうやったら英語が上手くなるかというのは大きな課題ではありますが、少なくとも日本にいる時には日本語や日本のことをしっかり勉強してほしいと思います。それは自分の国を出て初めて自分の国のことを案外知らない、ということに気付くからです。2000年もの間文化が断絶されたことのない日本は世界でも珍しい国です。企業の寿命が短かくなっているからといって、日本には創業数百年を超える企業がまだ多く存在し、1000年を超える企業さえ存続しています。

このような国は他にはないです。縁あって日本に生まれてその文化、環境にふれたならば、外に目を向ける前に今持っているものを十分に味わって身につけてほしい、日本で育った日本人ならばそれが一番初めの土台になる部分だと思います。其の上に色々な色をのせていってもらいたいな、できればいいとこ取りができるようになるといいななんて思っています。

拙い文章に今までお付き合いいただきましてありがとうございました。ボストンのイノベーションエコノミーの記録としてこのブログが何かのお役に立つことがあったなら幸いです。

 

 

 

 

 

 

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(7 古くて新しい価値観)

古くて新しい価値観

ここ最近注目されている、成功の尺度は『幸福度』。特にアメリカで社会的に高い地位にあったり、金銭的にいわゆる“成功”している人達がこれを言い出しているのは、お金で、多くのことが解決できるとしても、金銭では満たされない状況や気持ち、不安がある人たちも多くいるからでしょう。(日本では特に幸福感を感じていない人が多いのが気になり ます)実のところ幸せかどうか、というのは 普遍的な尺度とも言えると思うのですがこの意味するところは成功の定義や幸福を測る指標が自分の外にある条件によって定義されるわけではなく自分の中の価値観によって定義されるということです。例えば健康であったり、いい友達がいたりと具体的に自分にとって何が大事で何が自分を最大限に幸福にするのかは人によって違い、それは色々な経験を積みながら自分を知りわかってくることでもあります。

日本では長時間労働、残業時間の増加が問題になっていますが仕方なく長時間労働をしているのか、自分の好きなことをおいかけているうちにそうなってしまったのかでは全く状況が違うので、少なくとも働き方を自分でコントロールできるようなスキルを身につけることが大事になってきます。 現実的には何か創造的なことをしようと思うと、時間の制限はあってないようなものなので、残業1日何時間まで、とかの区切りをつけるのはあんまり意味がないこともあります。それよりも、集中して働いたあとの、切り替えのための休暇や補償をもらえたほうが、人によっては現実的かもしれません。会社側もよりフレキシブルな雇用体系が望まれるようになってきています。自分の専門を増やして掛け合わせていくためには何が得意なのか、ということを知ることも大事です。得意で好きで、需要があるところで自分の能力を最大にいかせれば、仕事に対する満足度も上がり幸福度も上がってくるように思います。

MIT grad MITの卒業式 2017年のスピーチはアップルのCEO Tim Cook 氏によるもので、社会をよくする為にはテクノロジーだけではなく、いかに人間性が大切なのかをときました。

最後に

お金を稼ぐ、ということはアメリカでは幼少の頃から日常的に生活に組み込まれてます。夏の暑い日に近所で、子供達がレモネードを作って売っていたり、学校の部活動の費用を賄うために、洗車をしたり、Tシャツを売ったりといったファンドレージング活動を通じて他人のために募金活動をするだけではなく、自分達の活動のために資金を集めることで、ビジネスの基本であるお金の流れの作り方を子供の頃から生活の中で習っていきます。少なくともそういった土台の上に今まで説明してきたようなシステムが成り立っているのですが、実際の経営となると哲学が必要になってきます。其のためには、一見専門には全く関係ないと思われる分野の知識、教養が必要です。 時代にフレキシブルに対応できるためには専門性を得ながらも広いネットワークと教養、見識を得ることが望まれます。

個々の持っている創造性を最大限に活用することが、イノベーションを起こす社会を作っていくことにつながりますがそのためには全く違った分野の人材を掛け合わせることがポイントになってきます。それを個人レベルでする為にはしっかりしたベースの上に個々のレベルでの組み合わせの可能性を増やすこと、それには専門性や技術の組み合わせ、言語の組み合わせ等、色々なパターンが考えられます。 そういったイノベーティブ人材が、移動しながらケースバイケース(プロジェクトや組織毎)でさらに様々な人たちと交流していくことで社会全体がイノベーティブになっていくように思います。

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(1 はじめに)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(2 なぜボストン?)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その1−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その2−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その3−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(5  企業やNPOの取り組み)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(6  日本でできること)

参考記事:

あんまり幸福感を感じていない日本人、トップの国とは何が違う?

日欧米、休みに対する考え方はこんなに違う。

子育てに協力的な父親は職場でもハッピーな傾向

多くのアメリカ人はロボットがますます仕事をするようになると思っているけど、自分の仕事は機械ができないと思っているという話

2020年にはアメリカのフリーランス比率は40%!?

日本の低い労働生産性について

定年後の生活の質が確保されているのはどの国?グローバル・リタイアメント・インデックス 2015
自分の才能や強みは何かを見極める為の適性テスト

自分の才能や強みは何かを見極める為の適性テスト ーその2ー

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(6  日本でできること)

働き方の変化

アメリカは転職社会だといいますがそれでも以前はやはり、1、2年で転職すると、いいイメージはなかったようなのですが、ここのところ移動のサイクルも早くなってきているようで特に、スタートアップの世界ではその傾向は顕著です。また自分の会社をやりながら他の会社も手伝っているという複業形態や在宅勤務、フレックスタイムでの勤務形態も多くみうけられます。組織にこだわらなくなれば定年を自分で決められる、働く場所を決めなくて良くなるというメリットが生まれます。(一方場所が拘束されなくなってもメールのおかげで勤務時間を際限なく広げてしまうことができるのも事実ですが。)ただし、いいも悪くも安定しないという可能性も高く、個人力を上げていく必要があります。

さて、今までアメリカの現状をみてきて日本でできること、こんなのあったらいいなと思われる点をいくつか挙げてみました。実際には業界や職種によっては更に色々なことが考えられると思いますし、 すでに動き出していたりするかもしれません。

組織の枠にとらわれないオープンな場とネットワーク力

行政、企業、大学等の組織の内外に、コミュニケーションが取りやすいオープンな物理的な“場”を作ること。そこに行けば最初は特に目的がないとしても、なんらかの出会いがあったり、一見して仕事には関係ないような会話やつながりから新たなヒントが生まれたり新しい人脈ができたりします。縦割り組織や業界に縛られず組織、業界を横断することができる人材や仕組みを大事にすることで分野の違う人たちと交流できる機会が増えます。 組織内で新規事業に取り組んでいる人達は縦割りの組織内で部門を横断して、また組織の外でも様々な分野の人たちと会話ができる人達です。一方、個人レベルでも新しい考え方にオープンであること、自立的に動けることが求められます。工学系が強い大学の一部ではすでにアントレセンター的な仕組みができつつありますが、大学のケースでは学部を横断するような仕組み、また大学の異なる部門間と、産業界との垣根が低くなれば、今までなかった部門間での協働が生まれたり、パテントや技術をビジネスに繋げられる人との出会いも生まれてくると思います。

毎年開催される国際教育交流分野での最大のコンベンションNAFSAでの日本ブース。世界中の大学から国際連携関係者が集まるプラットフォームになっています。大学だけでなく、国の機関、語学学校、留学斡旋機関、学術振興会等グローバルにリアルに繋がることができる場です。このような国際レベルのネットワーキングの場を最大活用する為には普段からローカルな場でネットワーキングに慣れている必要があります。

英語とコミュニケーション力

以前、日本から来た方から50通ほどアメリカの会社にメールを書いても誰も返事をしてくれなかったがどうしたらいいのか、というお尋ねがありました。メールの数はともかく、実はこういう話はよくありこれは個人レベルだけでなく、企業や、行政からの発信しているメッセージも同じです。英語の問題というより、言葉の使い方、発信の仕方の問題であることが考えられます。せっかくいい情報や発表があっても、伝えたいメッセージや目的がはっきりせず、其の他大勢の中に埋もれてしまっているケースが多いです。

今後、日本にいながらにして英語でコミュニケーションを取らないといけないというケースがますます増えてくることが想像できます。しかし、英語ができることとコミュニケーション能力は 、別の問題です。

特に日本語の場合、100%言葉にしなくても通じてしまうこともありますが、一般的には文化的背景や言語が違う人たち相手にはそれは通じない、しかも、英語で表現する場合は、曖昧さというのが通じません。だからといって、長々とした説明文章を書いても益々、相手の興味が薄れてしまいます。 よって伝えたいメッセージの本質が何なのか、ということはまず日本語で明確であることが大事です。しかし、専門分野の言葉はある意味、万国共通で、余計な説明がなくても意外とすんなりわかりあってしまうものです。英語がすごくできることより、本質がわかっていることの方が大事であることを考えると、英語を習うなら自分が日本語でよく理解している分野から入るというのいいのではないかと思います。一番簡単なのは、作品(のようなもの)を見せることだと思いますが。

40代〜の教育プログラム

平均寿命が延びる中で明らかに、元気で動ける時間が伸びています。一方、年齢が上がればいい条件で再就職をするのが難しくなってきます。少子化が進んでいる現在、40代以降をどう過ごすか、社会はどう活用するかは大きな問題です。ITやAIの進歩で今後はどんどん、現在ある職がなくなる可能性が指摘されています。それはブルーワーカーの仕事ではなく、分析したり画像診断したりという高学歴、高スキルを要求されていた仕事にも及びます。環境にどんどん適応するように教育やスキルを追加していかないと、働き場所がなくなる可能性が大きいです。40代のうちに自分を再ブランディングすることで50代からの準備ができそうです。専門家としての道を極めるのか、管理者としてやっていくか、起業するか等々自分のスキル、能力や強みを客観的に評価し、次の20年をみすえて選択と集中する時期なのだと思います。30代後半のマネージャーは自分の組織に見本となるような『素敵な先輩がいない』とぼやいていましたが、もしかすると、自分の理想の将来像に近い人はそもそも存在していなくて、こっちの素敵な人とあっちの素敵な人の掛け合わせで自分が望む姿ができるのかもしれません。

このブログを書いている中で実は一番読まれた記事はもし、あなたが40歳を超えていて、これから英語を使ってビジネスや起業に関わることを学ぼうと思っているのなら...だったのですが、会社内で行われる研修や一部民間機関の提供するコースを除けば、大学で30代後半から40代になっていざ何かを改めて習いたいと思ってもなかなか学位や資格が取れるようなプログラムが大学にはないのではないでしょうか。今さら大学?という感じもありますが結局大半の人は学位や資格がないと判断ができなくて少なくとも少子化が進んでいる現在、40代以降を社会はどう活用するか、各個人はどう過ごすか、は大きな問題です。(そうはいってもあと20年後には本格的に“個人”の時代になって医療のようにより個人にあったカスタムメイドの学習プログラムのようなものが出現しているのかもしれませんが。。。。)

いくつか違った分野の専門を持っている場合、大きな組織を上から管理していくようなマネージャーの育成というより、利害関係が違う団体や部門、企業、国などを横につないでいくコミュニケーションを重視した調整役や交渉役に近い人材の育成というのも考えれられるのかもしれません。

40から50代以降どうありたいか、何ができるかの道が見えてくると定年を自分で決められるようになったり、定年後の社会との関わりかたというのも変わって来るのではないでしょうか。また早めにリタイヤしたとしても、例えばアクセラレーターのメンターになったり、NPOでボランティアというのもそれまでの経験や人脈、知恵はなんらかの形で社会に還元できる方法だと思います。定年退職した人達を生かすことができる組織やネットワーク作りも望まれます。

参考記事:

増え始めるシニア向けの大学講座

55歳からの起業    

理系女子を育てる取り組み

 

 

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(5  企業やNPOの取り組み)

企業は各種非営利団体を支援することで人材育成の機会を得ています。NPOのプログラムに参加することで社内起業を促進させたり、企業で働きながら、ボランティアとしてNPOの活動の手伝いをする人たち、もしくは企業自体が人を派遣することでNPOを積極的に支援している場合(例:サイエンスクラブフォーガールズ)やプロボノ活動をしている場合もあります。特に専門性の高い分野の仕事(例:会社登記、税務、弁護士)においてはスタートアップを支援するために積極的にプロボノ活動をしているところは多くあります。これには彼らがスタートアップの成長を見守りながら優良な顧客として育てているという側面もあります。それからTEDxのようなイベントの支援もボランティア活動としてチームビルディングや従業員の教育の為、また新しい商品やサービスの開発の機会に利用して、積極的に企業の外につながりが持てるようにしています。

またイヤーアップのように大学に行けない若者に企業がサポートし1年で職業訓練をして、就職できるレベルまで教育するプログラムを支援することは企業と学生双方にとってメリットがあるものです。イヤーアップは大変成功している例で去年MIT inclusive Innovation Competition Awardsを受賞しました。

またCICの姉妹団体でノンプロフィット団体であるベンチャーカフェは、毎週木曜日にカフェスペースを解放してイノベーターが集まるネットワーキングの場を提供しています。色々なプログラミングを組む事で企業や大学、中高生を含む、様々な層のイノベーション度 を上げるために貢献しています。

参考記事:

理系女子を育てる取り組み

子供への金融教育の必要性

1年で終わる職業訓練プログラム-year up-

グローバル化に乗り遅れている大企業ができること

大企業にいても、スタートアップにいても必要な起業家精神

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンは比較的治安がいいのですが、それでも犯罪率が高く、治安のよくないエリアがあります。治安の悪いところは失業率も高かったりするものですが、そのエリアにSTEM関連(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)を強くする中学、高校を作りました。求人も多く、給料水準も高い分野なのでそのエリアで将来的に就職できる人が増えることで失業率を減らし、治安をよくしようと考えています。

外国機関の活用例

優秀な人材、資金、研究ネタが集まっているボストン市近郊(ケンブリッジ市含む)にはそれを活用したい外国機関のアクセラレターやインキュベーション的な仕組みも入り込んでいます。東海岸はヨーロッパに近いのでヨーロッパの国々の活動が盛んですが、韓国もマスチャレンジを支援していますし、フランスやドイツのアクセラレーターやカナダ等の国が支援して、各国のスタートアップを連れてくるプログラム、起業の勉強するプログラム等を企画してアメリカ以外の国の企業もボストンのエコシステムを利用しています。またアメリカから当該国に進出したい会社とのつなぎの役目も果たしています。オランダやスイスは領事館レベルが科学技術、イノベーションを促進する為に特化した形で積極的に支援プログラムを組んでいます。

フューチャーおぶざマネー2

スイス科学領事館の主催している『フューチャーオブマネー』シリーズ。“お金”にまつわる話、銀行、AI,ビットコイン、ビックデータ等最先端の研究、ビジネスに関わる人達を集めてのパネルディスカッションを定期的に開催。

参考4

スイス科学領事館は、イノベーション、科学技術、高等教育の分野においてスイスとアメリカの大学の研究、企業、産業等を結びつけたり、双方の企業の進出や提携を促すようなプラットフォームを作っています。

領事館が支援するプログラムにベンチャーリーダーズという毎年ボストン(NYC)にやってくるスタートアップ支援プログラムがあります。毎年、100社以上のエントリーから20社を選びスイス科学領事館がプログラムを組んで いるものですが、1週間のこのプログラムでは、バブソン大学に行って学んだり、VCとのネットワーキング、ピッチイベントを通じてアメリカで資金調達のチャンスを得たり、販売経路を確保したりしています。

フューチャーオブザマネー

参考記事:

スイス科学領事館 swissnex(スイスネックス) モデル

ボストン市が考えるイノベーションエコノミーを牽引する為の市の役割

カナダのアクセラレータプログラム

学校が地域にどんな影響を与えるのか -治安の悪い所にできるSTEMアカデミー

マサチューセッツ州のイノベーションポリシー概要
雇用は戻っても、給料は減っている中、どんな職業を選ぶべき?