ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンは比較的治安がいいのですが、それでも犯罪率が高く、治安のよくないエリアがあります。治安の悪いところは失業率も高かったりするものですが、そのエリアにSTEM関連(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)を強くする中学、高校を作りました。求人も多く、給料水準も高い分野なのでそのエリアで将来的に就職できる人が増えることで失業率を減らし、治安をよくしようと考えています。

外国機関の活用例

優秀な人材、資金、研究ネタが集まっているボストン市近郊(ケンブリッジ市含む)にはそれを活用したい外国機関のアクセラレターやインキュベーション的な仕組みも入り込んでいます。東海岸はヨーロッパに近いのでヨーロッパの国々の活動が盛んですが、韓国もマスチャレンジを支援していますし、フランスやドイツのアクセラレーターやカナダ等の国が支援して、各国のスタートアップを連れてくるプログラム、起業の勉強するプログラム等を企画してアメリカ以外の国の企業もボストンのエコシステムを利用しています。またアメリカから当該国に進出したい会社とのつなぎの役目も果たしています。オランダやスイスは領事館レベルが科学技術、イノベーションを促進する為に特化した形で積極的に支援プログラムを組んでいます。

フューチャーおぶざマネー2

スイス科学領事館の主催している『フューチャーオブマネー』シリーズ。“お金”にまつわる話、銀行、AI,ビットコイン、ビックデータ等最先端の研究、ビジネスに関わる人達を集めてのパネルディスカッションを定期的に開催。

参考4

スイス科学領事館は、イノベーション、科学技術、高等教育の分野においてスイスとアメリカの大学の研究、企業、産業等を結びつけたり、双方の企業の進出や提携を促すようなプラットフォームを作っています。

領事館が支援するプログラムにベンチャーリーダーズという毎年ボストン(NYC)にやってくるスタートアップ支援プログラムがあります。毎年、100社以上のエントリーから20社を選びスイス科学領事館がプログラムを組んで いるものですが、1週間のこのプログラムでは、バブソン大学に行って学んだり、VCとのネットワーキング、ピッチイベントを通じてアメリカで資金調達のチャンスを得たり、販売経路を確保したりしています。

フューチャーオブザマネー

参考記事:

スイス科学領事館 swissnex(スイスネックス) モデル

ボストン市が考えるイノベーションエコノミーを牽引する為の市の役割

カナダのアクセラレータプログラム

学校が地域にどんな影響を与えるのか -治安の悪い所にできるSTEMアカデミー

マサチューセッツ州のイノベーションポリシー概要
雇用は戻っても、給料は減っている中、どんな職業を選ぶべき?

 

 

 

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その3−)

同窓会の役割

また大きな役割を果たしているのが同窓会です。ここの大学をでればなんとかなるというのは、直接仕事がもらえるからということよりも、その卒業生のネットワークに入ることで、通常コンタクトしにくかったルートを使って人材紹介を受けたり 役にたつ情報をもらえたりといったことができるからです。大学側にとってみれば、卒業生とのリンクが就職率を上げることになったり、寄付金を募るという資金調達の面からも 同窓会の存在を重要な位置付けとみており、卒業生とのコミュニケーションを大切にしています。この部分を強くすることは大学のブランディングを強化することにも通じます。

イノベーティブ人材を教育する素地

アメリカの大学はダイバーシティーを重要視して、学士レベルに入学する時も人種や性別のバランスだけでなく、学生個人の色々な面を総合的に見て勉強だけでなく、部活や学内での活動、学校外での活動、エッセーでは物の見方や考え方を考慮します。大学に入る前の18年間、例え同じ学校に通っていたとしても、人によってはやっていることは随分変わってきます。個人レベルでも相当違うのに学部単位になれば相当なバリエーションができます。さらに大学院、例えば、MBAに入ってくる学生は様ざまでビジネスを専攻していた人もいれば、エンジニア、医者、歴史を勉強してきた人、軍隊の人、公務員、大学に行かないで高校卒業後に仕事をしてきた人等あらゆる人が世界中から集まります。そういう掛け合わせが新しい発想を生んできます。

アメリカの大学の問題点

近年は特にアメリカの学費が高騰しており、外国人としてアメリカの大学で学ぶ費用を考えると敷居が高くなってきました。高ランキングの大学も低ランキングの大学もどっちにしても同じくらいの学費をだすなら、よりレベルの高い学校にいきたい(いってもらいたい)ということで、高校レベルからボーディングスクールに行かせる、もしくは母子家庭のように子供と母親がアメリカにいるというパターンも増えています。一部私立の高校は外国人を受け入れることで高額な学費を得て小規模な運営をすることから外国人が増え、語学学校化しているともいえます。大きな問題は高額な学費を払って卒業したとしても、就職が保証されているわけではなく、労働市場で必要とされている人材と、教育機関が教育する人とのとの間にギャップがあることです。そして1980年代から1990年代に生まれたミレ二アル世代はその前の世代に比べずっと多くの起業教育をうけてると言われているものの、実際起業している人たちは減っているといいます。それはこの世代はそれ以前の世代よりも学生ローンを抱えており、起業するどころではないという現実があるからのようです。

欧と米の対比 参考3

ヨーロッパの大学(ドイツ語圏)vs アメリカの大学

*ここでいうヨーロッパの大学は主にはドイツ、スイス、オーストリアというドイツ語圏の大学を指します。

アメリカの大学は学生の勉強面だけでなく、就職やインターンシップ、場合によっては起業といった将来的にしたいことに対してまでも支援をします。学生側も高い学費を払ったことで学生ローンを返したりしなければならないので必死です。アメリカの大学の形は非営利団体ですが、費用は賄わないといけないので運営の考え方は普通のビジネスと変わらず、一般のサービスプロバイダーに近いです。

一方、ヨーロッパの大学はほとんど授業料がかからなく、(もしくは非常に安い)公共性が高く 、勉強したい人がいくところ、すなわち自分で考え、動く、という前提があります。ブログでも何度も指摘している通り、高校卒業資格のレベルが違うので、ヨーロッパの学士は3年で終了(いわゆる、教養課程の部分は高校までに終了してしまいます。)、アメリカや日本の学士は4年で終了するプログラムが通常組まれています。

ヨーロッパの学校の仕組みは、学士レベルでも大学では専門性がはっきりしてます。一方、アメリカだと 専攻しても途中で変えることや、はじめは何を専攻するつもりか明確でなくても後から変えるということが可能です。それから新入社員に 会社が手厚い研修をしてくれるわけではないので(一部の企業、もしくはケースを除いては)ヨーロッパの大学も、やはりインターンの経験等がないとその後に仕事を見つけるのは難しくなってきます。しかし、大抵が個人的にインターン先を探すことになりそのプロセスも自立して行うことが期待されます。

 一方、ドイツ語圏の場合大学を出なくても専門職として自立、起業する道は職業訓練制度にあります。職業訓練制度が充実していることから、高校まで普通にでて専門学校にいったり、中学を卒業してからそのまま職業訓練学校にいく人もまだ多くいます。職業訓練の利点は、学校にいきながら、実務を実際の職場で同時に学ぶ点で、受け入れ先がなければつきたい職業だとしても働く場がありません。15歳で自分がこの先3年間お世話になるであろう職場に場合によっては数十通のレターをかき、社会に出て行くことを通じて責任感が生まれてきます。企業側もそうやって、必要な人材を育てていく役割を担うことで、労働市場における需給バランスが保たれます。そして最短で18歳には1人前になり、場合によっては3年後には独立することもできるようになりますがそれでもまた他の職業や勉強をしたければそれからでも遅くはありません。そうやっていくつかの職業や学歴を重ねていくことであらたなキャリアパスができてきます。

 −考え方の比較−

どちらがいいというより、何を目指しているかでもかわってくるとはいえます。国家資格(職業によっては国だけでなく州単位でも資格が違うものあり)が必要なようなものに関してはどの国のどの言語で学ぶかということは大きな問題点になってきます。

ただ職種によっては国際的にも組み合わせることも可能です。職業訓練の道をいったからといって、大学院やMBAにいけないか、というとそうではないです。実際、大企業の重役には大学を出ていない人もまだまだ多くいますし、中小企業を運営している人は特にそうです。職業訓練の後からその道の専門家として、仕事に従事し、アイビーリーグのビジネススクールに入った人を私自身何人も見ていますし少なくともビジネスの分野では経験が勉強以上に役に立つと、いえそうです。一方、大学(院やビジネススクールにいったからといって、必ずしもすぐ仕事がみつかる、もしくは給与があがるという保証もありません。それどころか、中小企業を立ち上げて院卒の人より、ずっと給与的には稼いでいる人たちも多くいます。

これはあくまでも個人的な見解ですが、ドイツ語圏の職業訓練学校からアメリカの大学院、特にビジネススクールに入ってくる人たちはもともと持っている専門性がとても高く、実務能力が高い人が多いので 専門の深さに外国に出ることで得られる視野の広さが重なり合って、その後の伸びもかなり大きいと見受けられます。やはり重要なのはしっかりした土台を持っていることのように思います。専門能力がしっかりしていると、たとえ英語に多少難があったとしてもエンジニアでも芸術でも専門職にはその世界での言葉があるので言語の壁を超えやすいです。

 参考記事:

アメリカ大学入試のこつ、願書を出す前に確認したいこと

起業を教えるネットワーク

1年で終わる職業訓練プログラム-year up-

英語圏でない国で英語で大学を卒業する方法

教育費の高騰で学費のかからないところにいくアメリカ人も増加中

中国の景気減速がボストンの大学に与える影響

留学生動向からわかる、インドと中国の経済状況

ダイバーシティーを重視するために様々な取り組みをするボストンの大学

高額をだして大学に行く価値はあるのか?

アメリカの大学の高い学費はどこに消えるのか?

ボストンで学ぶ外国人学生の増加と問題点

増加するアメリカの大学中退者

大学による、生き残りをかけた起業教育

文系大学での勉強って役に立たない?

大学(学士)を3年で終わらせることで経済的な負担を減らす取り組み

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(2 なぜボストン?)

 

なぜボストン?

ボストンはマサチューセッツ州にあります。アメリカの中でみると大変小さいこの州。(アメリカの州の大きさランキングでみると、下から8番目)州の大きさは約27336 平方キロメートル、イメージ的には秋田県と岩手県を足したくらいの大きさになります。

この州には高等教育機関が約120ほどあり、(無認可を含めると300近くあるそう)そのうちボストン近郊には35ほどで、世界で一番、ノーベル賞受賞者が集中している場所です。日本から見ると、ボストンと一括りに見ますが、アメリカで一番古い大学であるハーバード大学(1636年設立)を始め、エンジニアの最高峰MIT(マサチューセッツ工科大学)はボストン市の隣にあるケンブリッジ市にあります。ボストン市と其の近郊にはタフツ大学、ボストン大学、ボストンカレッジ、アントレプレナーシップで有名なバブソンカレッジ、全米でも1、2位のリベラルアーツカレッジである、ウィリアムズカレッジやアムハーストカレッジ、優秀な女性政治家を輩出しているウェルズリーカレッジ...と世界に名だたる大学が多数あります。

そんなボストンには大学の研究と起業を結びつける仕組みが整っており、学生の起業を支援するプログラムが充実していることから大学発の研究からスピンオフしたスタートアップがたくさんあります。Kauffman Indexによると2016年にボストンエリアで活動しているスタートアップ数は 1869社にものぼります。そして、 移民の創設者の割合が30%、これは世界平均が19%だということと比べると非常に高い数字です。

又、ボストンは西海岸のシリコンバレーと並び、ハイテク関連の起業が多いことで知られていますがVCの投資額ではカリフォルニア州が一番多いものの、マサチューセッツ州では一人当たりが受け取るベンチャーキャピタルの金額が全米で一番多くライフサイエンスの分野では全米で1,2を争う病院機関もあり世界中の製薬会社も集中したハブにもなっています。R&D比率は実は国レベルよりも地域で見るとかなり、変わってくるのですが、マサチューセッツ州のGDPに対するR&D比率は 5.86%ちなみに日本は2016年度で3.58%)であり研究開発投資に力を入れていることがわかります。

このようにボストンには優秀な人材を引きつける環境があり、高度な技術や知識をもった人達が起業したり、イノベーションを起こすために、公共、民間問わず必要なサポートを提供するエコシステムがあります。

参考記事:

ボストンの大学が地域経済に与える影響についてのデータ

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(1 はじめに)

はじめに

ここ数年、ボストンのイノベーションエコノミーに関わりながらイノベーション、起業、教育に関するブログを書いてきたわけですが、そろそろ総括してみたいと思います。もともとこのブログはアメリカ人が得意なことを学ぼうというところから出発しました。私が思うアメリカ人が得意な事は何もないところから何かを生み出すこと。この間ファンドレージング、セールス、プロモーション、ネットワーキング、コミュニティー作り、ゼロから1を作るビジネス構築に関して、大学、企業、NPO、官公庁といった様々な層と関わりながら、そして子供の教育を通じて勉強したり、経験を重ねてきました。

イノベーションは新しいビジネスを作り雇用を生むので大切という考えが浸透したことにより、日本から各種団体とたくさんの方たちがボストンにみえて彼らと話しをする機会が多くありました。どの方達も、ボストンで成功しているエコシステムを学び、いかにそれを日本に導入できるのか、どうやって国際的に協働していけるのかに興味を持っておられます。実際は日本だけでなく、世界中の国から毎月のように多くの各種団体がイノベーションのエコシステムを学ぶためにボストンにやってきていますがそれぞれの国はその仕組みを直接とりいれるだけではなく、どうやったら今ある各国の仕組みと掛け合わせることができるのかということを考えています。イノベーションを起こす、ということを仕組みで考えると、企業レベルの問題だけでなく行政機関、大学を含めた教育の枠組み、そして個人のレベルでは何ができるのかということも考慮することが必要になってきます。そこで ボストンにおける人材教育、起業教育についての概要をまとめました。

雇用形態や勤務形態の多様化 、ライフスタイル等の変化、それに加え企業の寿命が短くなってきている中、才能やアイデアをもった人材は一つの企業や大企業にずっと雇用されるという機会は今後ますます減ってくるということは容易に想像できます。実際、innosightによるとスタンダードプアーズ500社の会社の平均寿命は1958年は61年であったのに、1980年には25年に、そして現在は18年までに短縮されています。

もし多くの人がたとえ企業体の中にいたとしても、何かのプロフェッショナルとして独立できるくらいの能力があれば、そういった人たちが協働し合い、必ずしも企業という形にこだわらずに活動や起業することもでき、組織に頼らなくても、またどこにいっても困らないのではないか、働き方の選択の自由を得ることができるのではないのかと思います。そこで今までのブログ記事をもとに、自立した、イノベーティブな人材を育てていくためにはどういう仕組みが考えられるのか、どういう教育の選択肢があるのかということをボストンの事例を中心に、多角的(公的機関、大学、企業、個人、及び欧州との比較)に考察していきます。

イノベーション、教育政策に関わっている人たちだけでなく、これから自分の子供たちが、国内外場所を問わず、一企業や何かに依存することなく自分の人生をコントロールできる人になってもらいたいと望む親御さん達の参考になればいいと思います。ライフスタイルを自分である程度決めることができるようになると、時間的にも精神的にも余裕ができ結果的には少子化問題にも対処できるのではないでしょうか。

*記事は基本的には4年間分のブログ記事からのまとめになります。詳しい事項に関してはブログのリンクを貼っておきますのでそちらを御参照ください。

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(2 なぜボストン?)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その1−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その2−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その3−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(5  企業やNPOの取り組み)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(6  日本でできること)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(7 古くて新しい価値観)
 

日本は女性差別が酷い国?

日本にいた時はそれほど意識したことがなかったのですが、アメリカにきて、”日本はすごい女性差別が酷い国だ”との発言をよくききます。つい先日も、日本に何度もきてよく旅行をするアメリカ人の男性が、自分は快適だけど、奥さんをつれて日本に長期きたいとは思わない、ということをいっていました。特に仕事(場)での女性が差別がひどいといいます。

”そんなに、酷いですか?確かに女性で管理職の人達は少ないし、いたとしたら男性以上にできる人が多いとは思うけど。。。” といったら、”ほらね。男性以上にできがよくなければ、管理職につけない、というのはまさに差別がある証拠だよ。” なるほど。まあ私は単にキャリアを中断しないで長期にわたり、第一線で活躍している女性の絶対数が少ない、そこに至るまでに相当やる気も能力もある人でないと生き残れないというのがその理由かと思っていましたが。家事、出産、子育て、介護ということの負担が女性のほうが極端に重いという部分も性差別の一つに考えられているようで、日本にビジネスでよく来る人達ほど、差別が酷い国、という印象が強いようです。

一方、先日話した、日本人の男性はアメリカに来た当初、レディーファーストということをあまり理解せず、部屋から出るときに自分がさっさと外にでようとしたら、後ろにいた女性に足を蹴られたといっていましたが、それはそれでちょっとやりすぎのような気がします。。。