ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(7 古くて新しい価値観)

古くて新しい価値観

ここ最近注目されている、成功の尺度は『幸福度』。特にアメリカで社会的に高い地位にあったり、金銭的にいわゆる“成功”している人達がこれを言い出しているのは、お金で、多くのことが解決できるとしても、金銭では満たされない状況や気持ち、不安がある人たちも多くいるからでしょう。(日本では特に幸福感を感じていない人が多いのが気になり ます)実のところ幸せかどうか、というのは 普遍的な尺度とも言えると思うのですがこの意味するところは成功の定義や幸福を測る指標が自分の外にある条件によって定義されるわけではなく自分の中の価値観によって定義されるということです。例えば健康であったり、いい友達がいたりと具体的に自分にとって何が大事で何が自分を最大限に幸福にするのかは人によって違い、それは色々な経験を積みながら自分を知りわかってくることでもあります。

日本では長時間労働、残業時間の増加が問題になっていますが仕方なく長時間労働をしているのか、自分の好きなことをおいかけているうちにそうなってしまったのかでは全く状況が違うので、少なくとも働き方を自分でコントロールできるようなスキルを身につけることが大事になってきます。 現実的には何か創造的なことをしようと思うと、時間の制限はあってないようなものなので、残業1日何時間まで、とかの区切りをつけるのはあんまり意味がないこともあります。それよりも、集中して働いたあとの、切り替えのための休暇や補償をもらえたほうが、人によっては現実的かもしれません。会社側もよりフレキシブルな雇用体系が望まれるようになってきています。自分の専門を増やして掛け合わせていくためには何が得意なのか、ということを知ることも大事です。得意で好きで、需要があるところで自分の能力を最大にいかせれば、仕事に対する満足度も上がり幸福度も上がってくるように思います。

MIT grad MITの卒業式 2017年のスピーチはアップルのCEO Tim Cook 氏によるもので、社会をよくする為にはテクノロジーだけではなく、いかに人間性が大切なのかをときました。

最後に

お金を稼ぐ、ということはアメリカでは幼少の頃から日常的に生活に組み込まれてます。夏の暑い日に近所で、子供達がレモネードを作って売っていたり、学校の部活動の費用を賄うために、洗車をしたり、Tシャツを売ったりといったファンドレージング活動を通じて他人のために募金活動をするだけではなく、自分達の活動のために資金を集めることで、ビジネスの基本であるお金の流れの作り方を子供の頃から生活の中で習っていきます。少なくともそういった土台の上に今まで説明してきたようなシステムが成り立っているのですが、実際の経営となると哲学が必要になってきます。其のためには、一見専門には全く関係ないと思われる分野の知識、教養が必要です。 時代にフレキシブルに対応できるためには専門性を得ながらも広いネットワークと教養、見識を得ることが望まれます。

個々の持っている創造性を最大限に活用することが、イノベーションを起こす社会を作っていくことにつながりますがそのためには全く違った分野の人材を掛け合わせることがポイントになってきます。それを個人レベルでする為にはしっかりしたベースの上に個々のレベルでの組み合わせの可能性を増やすこと、それには専門性や技術の組み合わせ、言語の組み合わせ等、色々なパターンが考えられます。 そういったイノベーティブ人材が、移動しながらケースバイケース(プロジェクトや組織毎)でさらに様々な人たちと交流していくことで社会全体がイノベーティブになっていくように思います。

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(1 はじめに)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(2 なぜボストン?)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その1−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その2−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その3−)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(5  企業やNPOの取り組み)

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(6  日本でできること)

参考記事:

あんまり幸福感を感じていない日本人、トップの国とは何が違う?

日欧米、休みに対する考え方はこんなに違う。

子育てに協力的な父親は職場でもハッピーな傾向

多くのアメリカ人はロボットがますます仕事をするようになると思っているけど、自分の仕事は機械ができないと思っているという話

2020年にはアメリカのフリーランス比率は40%!?

日本の低い労働生産性について

定年後の生活の質が確保されているのはどの国?グローバル・リタイアメント・インデックス 2015
自分の才能や強みは何かを見極める為の適性テスト

自分の才能や強みは何かを見極める為の適性テスト ーその2ー

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(4 公共機関ができること)

ボストンは比較的治安がいいのですが、それでも犯罪率が高く、治安のよくないエリアがあります。治安の悪いところは失業率も高かったりするものですが、そのエリアにSTEM関連(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)を強くする中学、高校を作りました。求人も多く、給料水準も高い分野なのでそのエリアで将来的に就職できる人が増えることで失業率を減らし、治安をよくしようと考えています。

外国機関の活用例

優秀な人材、資金、研究ネタが集まっているボストン市近郊(ケンブリッジ市含む)にはそれを活用したい外国機関のアクセラレターやインキュベーション的な仕組みも入り込んでいます。東海岸はヨーロッパに近いのでヨーロッパの国々の活動が盛んですが、韓国もマスチャレンジを支援していますし、フランスやドイツのアクセラレーターやカナダ等の国が支援して、各国のスタートアップを連れてくるプログラム、起業の勉強するプログラム等を企画してアメリカ以外の国の企業もボストンのエコシステムを利用しています。またアメリカから当該国に進出したい会社とのつなぎの役目も果たしています。オランダやスイスは領事館レベルが科学技術、イノベーションを促進する為に特化した形で積極的に支援プログラムを組んでいます。

フューチャーおぶざマネー2

スイス科学領事館の主催している『フューチャーオブマネー』シリーズ。“お金”にまつわる話、銀行、AI,ビットコイン、ビックデータ等最先端の研究、ビジネスに関わる人達を集めてのパネルディスカッションを定期的に開催。

参考4

スイス科学領事館は、イノベーション、科学技術、高等教育の分野においてスイスとアメリカの大学の研究、企業、産業等を結びつけたり、双方の企業の進出や提携を促すようなプラットフォームを作っています。

領事館が支援するプログラムにベンチャーリーダーズという毎年ボストン(NYC)にやってくるスタートアップ支援プログラムがあります。毎年、100社以上のエントリーから20社を選びスイス科学領事館がプログラムを組んで いるものですが、1週間のこのプログラムでは、バブソン大学に行って学んだり、VCとのネットワーキング、ピッチイベントを通じてアメリカで資金調達のチャンスを得たり、販売経路を確保したりしています。

フューチャーオブザマネー

参考記事:

スイス科学領事館 swissnex(スイスネックス) モデル

ボストン市が考えるイノベーションエコノミーを牽引する為の市の役割

カナダのアクセラレータプログラム

学校が地域にどんな影響を与えるのか -治安の悪い所にできるSTEMアカデミー

マサチューセッツ州のイノベーションポリシー概要
雇用は戻っても、給料は減っている中、どんな職業を選ぶべき?

 

 

 

ボストンから学ぶ、イノベーティブで自立した人材の育て方(3 大学の役割 −その1−)

大学は学びの場であると同時に研究機関であり、人材育成をする場です。

日本のように、一般的に学士のレベルでは専門性が高くありません。よって、一度入学しても、途中で専攻をかえたり、そもそも、はじめから専攻を決めないで入学するということも可能でリベラルアーツ大学のように幅広く色々勉強してみて、最終的に専門的なことを学ぶ為に大学院に行くという考え方もあります。

研究機関としてはボストン周辺にはハーバードやMITを始め世界のトップレベルの研究機関が集まり、その研究は実用化され、ビジネスに結びつけることができるような仕組みが出来ています。

大学の起業支援

各大学にはそれぞれの大学発のスタートアップを支援する仕組み(例えばMITの場合、アントレプレナーシップセンターやDeshpande センター)があります。特にDeshpandeセンターはイノベーションテクノロジーの分野で豊富なメンター勢をプールしており大学での研究に対して金銭的に投資するだけではなく、 その研究をどのように製品化(サービス化)してどのように市場に出していくのかというところまでサポートします。最先端の技術を使って起業する場合、一分野の専門家だけでなく、複数の分野の専門家がサポートする必要がでてくることも多く、どの分野にどういった人材が必要か、又、どの分野とどの分野を掛け合わせたらいいかなど、幅広い分野にまたがりコーディネートもしてくれます。(ちなみにDeshpande Centerでは、そのしくみを海外の大学にも公開しています。)

MITではMBAプログラムを提供するスローンスクールや、賞金100K(10万ドル)をかけた起業コンペがありますが最近はそれだけでなく、MITは周辺エコシステム全体を盛り上げるための仕組み、Engineというアクセラレータプログラムを始め、MITからのスタートアップだけでなく、周辺エコシステムを強化するプログラムを始めました。通常大学が運営するプログラムは少なくとも参加チームの一人は大学の学生である必要があったり、学校によってはかなり閉鎖的なプログラムも多いのですが、Engine はボストンのエコシステム全体を底上げするようなプログラムであるのが特徴です。一方、ハーバード大学はハーバードの学生のためのアントレセンターであるHarvard i-labや ここ最近ではライフサイエンススタートアップのためのインキュベーションを新しく立ち上げました。しかし、あくまでもハーバードのコミュニティーのためということで、両校のスタンスの違いが明確に出ています。2017年夏には稼働予定でMIT内外より既に150億ドル以上の資金を集めています。ボストンエリアで特徴的なのはMITや、ハーバード、ボストン大学といった通常の大学のみならず、バークリー音楽大学のような専門性の高い大学でもビジネスと結びつけるようなプログラムを提供することで学生が専門性とビジネスを結びつけられるような 機会を提供していることです。

欧と米の対比 参考1

ちなみにEntrepreneurship and Innovation at MITのリポートによると、アメリカで新しく設立されたビジネスの約50%が5年以上存続し、10年続くところは35%だと言いますが、MITの卒業生が起こした会社の80%は5年以上存続し10年存続するのは70%になると言います。

一方、世界ランキングではアメリカ以外の工科大学ではトップに立つ、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)からのスピンオフの業績とスイス経済に与える影響を分析したリポートがあります。ETHの学生(もしくは卒業生)が立ち上げた会社は立ち上げ5年後の生存率が92%でこの生存率はスイスで誕生したほかのスタートアップより40%も高い数字になるといいます。(これは1973年以来ETHからスピンオフした企業、315社を追って調査したもの)これは絶対数がすでに少ないということもあるとは思いますが もちろん数字上の裏付けはないものの、スイス人も日本人に似て慎重であり、リスクテーキングをしない、失敗が許されにくい社会であるということがあるのではないかとの分析があります。マイナス部分を逆手にとって起業のハードルが高いことがかえって起業の成功率をあげているのかもしれません。

参考記事:

バークリー音楽大学の起業教育

進む大学のイノベーション教育

大学での起業教育がトレンディー、ボストンカレッジも創設するアントレセンター

タフツ大学が取り組む起業教育

大学による、生き残りをかけた起業教育