大学間の資金の格差がますます鮮明にーその2−

アメリカの大学間の資金格差は確実に広がっています。

ハーバード大学は世界一リッチな大学であることで有名ですが、先週400億円以上の金額が、ハーバード大学エンジニアリングと応用科学学部に寄付されました。
リッチな大学がさらにリッチになる、ということでこのような高額な寄付はもっと他の目的に使われるべきという非難の声もでています。この金額は全米の大学の寄付金のうちの98%を超えるということで、いかに高額がということがわかります。(ボストングローブ6月9日)

日本の大学のグローバル化対策のために文部科学省は「スーパーグローバル大学」に、国公私立大37校を選び2023年度までの10年間に1大学当たり最高約4億2千万円の補助金を毎年支給することになりました。

先日のNAFSA2015で日本の規模の小さな私立大学に勤めているアメリカ人の教授が、教育の公平性を求め、小さい規模の大学にも支援が欲しいという要望をだしていました。強いところをさらに強くする政策をしてどうするんだ、とアメリカ人が言っているのをきいてなんだか妙な感じがしましたね。。。。
もっとも日本の場合は、アメリカのように市場原理が働いてそうなっているというより、国策としてあえて格差を作ろうということですが。

現実的に考えてみると、日本の少子化、と大学数を考えれば、学生が集まらない学校というのは確実にでてくるでしょうし、それと同時に、いい学校にもっと人が集中してくるということになるでしょう。

特に私立の場合、強い特色がなければ確実に存続できなくなってくると思われます。
しかし、学費が安ければ、人が集まるのかといえば、そうともいえず、例えばこんな例があります。

スイスの大学は基本国立大学であり、授業料は大学間で多少の違いがありますがだいたい年間10万〜15万円程度、ところが私立の大学も少数あり、その場合、アメリカの大学と同じくらいの金額のところもあります。
同じ国の中で、(しかも小国)これだけ金額の差があっても、人が集まるんですね。高校でも同じことがいえます。ヨーロッパの公立高校は基本無料ですが、ボーディングスクールにいくとなると、年間アメリカの大学にいく以上の費用(場合によっては1000万近く)がかかります。それでも人は集まってきます。
要するに、私立であれば、ターゲット、教育指針が明確でなければならず差別化できれば、十分生き残っていけるともいえます。

ハーバードの場合は、資金が集中することでボストンエリアでの雇用にも大きく貢献しており、多くの学生が授業料の免除をうけられ、研究にも多大な費用を使い、結果をだすことができるという好循環になっています。

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今年のハーバード大学への出願者は9%の増加

今年の9月から大学に行くための学生の選考が山場を迎えています。最終選考は3月末に発表されるそうですが、ハーバード大学に出願した学生が去年に比べ9%増えたといいます。現在ハーバードカレッジ自体は6700人の学生がいますがこれを単純に4で割ると1600から1700人程度を毎年受け入れている計算になります。

今年の出願者は37305人、ということで単純計算すれば倍率25倍ということですか。実際には人種、国籍のバランスをみていくわけですから出身国によればもっと大変、もしくはもう少し楽なのかもしれませんね。

自分が学生の頃は大学4年になると、色々な会社やリクルートのようなところから就職説明会の案内やダイレクトメールが届いたものですが、(今はもっと早い?)ここではそれと同じようなことが大学入試を控えた高校生にも起こります。アメリカには有名大学から名の知られていない大学まで相当数の大学があるわけで、多くの大学が生徒を確保するのに、色々なアプローチをしてきます。
ブルンバーグによると他のアイビーリーグの大学、コロンビア、プリンストン、ブラウン、ペンシルバニア大学といったところでも出願が増えているといいますが一方、イエール大学は2%の減少、これは該当する者へのダイレクトメールを減らしたからとのことで、大学側によるアプローチというのはやはり認知度というものをあげているといえそうです。

ハーバード側は今年の出願者が増加したのはハーバードの卒業生からの多額の寄付金(1億5千万ドル)があったことを大きく公表したこと、ウェブやビデオ、ソーシャルメディアでのコミュ二ケーションに力をいれてきたからではないかと分析をしています。
実際60%の学生がなんらかの奨学金、補助金を得るということで平均では一人当たり年間1万2千ドル程度を支払っているということです。

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これから日本の社会が大学に育成してほしい、人材とは?

ノースイースタン大学が、2億2千500万ドルかけて新しく科学、エンジニアリング研究所の建設を来月着工する、という話がボストングローブ紙 12月5日にのっていました。

新聞によると、
ボストン界隈は各大学がしのぎを削って、投資をしています。

・ボストン大学
2つのサイエンスとエンジニアリングのビルが10年以内に完成予定。

・MIT
ナノマテリアル研究所と科学、エンジニアリングスクールの研究施設が2018年に開設予定

・ハーバード大学
巨大なサイエンスコンプレックスを建設中で、エンジニアリングスクールがこちらに移動予定

・マサチューセッツ州立大学 アムハースト校
サイエンスコンプレックス、半分はすでにオープン済みだか残りの半分は2016年開設予定

・ウェントワース技術大学とウェルズリー大学は小さめのサイエンスラーニングとリサーチスペースを確保

米国ではサイエンスとエンジニアリングの分野で学士号をとる人がこの5年の間に、19%も増えており、他の分野では9%の伸びにとどまっているということです。
これはこの分野の就職率が他の分野よりもずっといいからです。
ノースイースタン大学の施設では主にヘルス、セキュリティ、持続可能性に関する研究が行われる予定だそうです。
学長によると、”社会がその分野に集中することを望んでいる” ということです。

さて、一方、日本の大学情報を提供している、ナレッジステーションというサイトによると、日本の大学で2014年度に開設される、学部は36校あります。
そのうち9校は看護関連、7校は教育関連、2校は理工関連の学部を開設予定。
又34校で新設される学科がありますが、そのうち看護学科は2校、理工学科は1校、情報通信学科は1校にとどまります。
総計、11校で看護関連の学部、学科が創設されるわけです。

就職を考えて学生に人気なのは、薬学、医療系、理工学部といわれていますが、大学経営が難しい中、それでも新設するということは、社会の需要が確実にあるのだということを想定すると、
日本の社会が望んでいるのは、看護関連の人材の育成、
ということになりますね。

上記のボストン周辺にある、大学で、規模が拡大するということは、必ずしも新学部を創設ということではないかもしれませんが、学科やコースが増えることは、十分想定できます。

日本の高齢社会化、を確実に感じます。

大学での成績は何を意味するものなのか?

ハーバード大学に50年以上も勤める教授が、成績にAを出しすぎるのは問題だ、という発言をしている、記事がありました。

アメリカの成績評価は A、 B、 C、 D、とありFは落第と考えて、更に、それぞれにプラスとマイナスがあります。(大学によってはないところもあるようです)

A: 90点~100点
B: 80点~90点
C: 70点~80点
D: 60点~70点
F: 落第     

この記事によると、(ボストングローブ 12月4日) 
ハーバードの学部生の成績で、普通の教授が一番多くつける成績が、Aだというのです。そして、これを問題視している教授は、悪くしても、Aマイナスが一番出されている成績かと思ったのに、そんなにAをだすなんて、とんでもない、といっています。この問題は、ハーバードに限ったことではなく、本当に優秀な学生が認められにくくなっていると、警告しています。

この教授の場合、最近では学生に2種類の成績をだすそうです。一つは成績証明書に書いてある成績、もう一つは教授が思う本当の成績。

自分がみている学生だけが、正当に評価されることで、罰をうけるようになることがいやだったが、大学側が方針を変えるべきだと思っています。

一方、学生達の反応は
”Aをとることは、どんな教科だって難しい。” 
”ハーバードに入ってくる学生は高校生の時に十分、いい成績をとってきており、それを大学でも、とり続けたいと思っている”
”確かに、いい成績を出しすぎてる”
という意見もありました。

だいたいそういった内容が記事に書いてあるわけですが、一番つけられている成績が “A”、って確かにすごい、と思います。だって、ハーバードですよ、っていうか、特に学部生は大学院生よりもずっと少なくて、入ってくる生徒達は、高校時代”A”しかとったことがないような子達で、その中での競争です。

そもそも学生はなぜ、いい成績をとりたいのでしょうか?

•プライド 
これは、前述の学生もいっていましたが、高校の時からいい成績をとることが普通になって、そういうものだと思っている場合。

•進学   
これは、将来的に大学院の進学を目指している場合が考えられます

•就職   
いい成績なら堂々と履歴書にGPAを書ける

•情熱   
その教科が好きで、勉強したくてしている場合

ざっと、こんな感じでしょうか。
詰め込みでもなんでも、いい成績をとると決めて、それを極めることができる人というのは、そこから創造性を発揮し、色んな方向に進む事は可能なのだと思います。問題は、なんとかいい大学に入ったものの、世の中には自分よりもっとできる人たちが沢山いるのに気ずき、思ったような成績もとれず、自分を見失ってしまう、メンタルの弱い学生かもしれません。

大学の成績は、論文だけでなく、出席率、授業への参加率や貢献度、またグループワークをした時のメンバーからの評価等、教授によってそれぞれの要素やその評価割合も違うので、自分がいい成績をとりやすい科目と、とりにくい科目は出てくるかと思いますが、それにしても、大学でいい成績をとるには、やはりあるものを継ぎ合わせるだけでなく、そこから発展した、新しいもの(考え)を生み出す必要があります。まさに昨日の記事、OECDの学習到達度調査 PISA 2012からわかること 、に書いたように、創造性を発揮できるような下地を高校生のうちに作っておくというのが、大学でいい成績をとるためにも役立ってくるのかな、と考えます。

起業したい人は大学に行く必要があるのか?

起業するのに大学に行く必要があるのか、そもそもなぜ大学に行く必要があるのか、という問題です。

ボストングローブ 10月10日

MITで行われたイベントでPayPal(オンライン決算システム)の共同創始者Peter Thiel 氏は、起業家にとって大学にいくことはお金の無駄であり、学校をやめてさっさとビジネスを始めたほうがいい、と発言した。

億万長者のPeter Thiel 氏は自分の資産を使って、聡明な若者達に10万ドルを出資し、大学をやめてサンフランシスコにある彼の機関で、革新的なアイデアのために働いてもらう。

Thiel フェローシップは定期的にトップスクールにスカウトにきている。2011年以来、62人のフェローが選ばれその3分の1はニューイングランド地方の人達だ。そこには、MIT, ハーバード、ダートマス大学、そして高校を卒業していない学生も含まれる。Thiel の代理人は1000人の学生がMITと国中から集まるMITのハックイベントにきていた。

Thiel フェローシップ の共同創始者のJonathan Cain 氏は ”一番いい学びは教室に座っている事ではなく、何かをすることで学ぶ事だ”
と、イベントの最初にスピーチした。

のちの、ボストングローブ紙とのインタビューで彼は、“私がいいたいのは、世界を変えるために伝統的な道を通らなくても、いいということです、しなくてはいけないのは、何かを起こす事です。”

Thiel フェローシップ はハックMITのスポンサーでもある。このイベントはMITの学生のグループで組織されて大学が、運営しているわけではない。
MITの広報はThielのプログラムがはいっているということも、グローブ紙がコンタクトするまでしらなかった。

MITの有名なアントレプレナーシップセンターの、スタートアップの世界ではグルでもあるBill Aulet教授はThiel氏のスピーチにあっけにとられた。
”彼らは、これらの教育機関を利用しているのに、そんなものは必要ないというのか。”

Aulet教授は ”Thiel氏はスタンフォードで哲学と法律の学位をもっているのに、他の人には教育が必要ないというのでしょうか。”といい、
MITの事務長のMartin Schmidt氏は、学生は学校にいならがらにして起業家として成功することもできる、とシンプルにコメントした。

”教育と起業は相反関係にあるというわけではありませんよ。MITで教育をうけた起業家が長期的に成功しているのは、現実の世界の機会や問題にもとずいた厳格な教育をうけているからです。”

Thiel氏はシリコンバレーの中だけの有名人ではない、フェイスブックの初めての外部投資家であり、50万ドルの投資を株を売る事で、10億ドルにした。
政治的にも活動をしている。
学歴もあり、母校スタンフォードでスタートアップの授業をしていても、 Thiel 氏は大学の学位の価値に疑問をもっており、“エジュケーションバブル” で学生や親の負債の負担がふえることを懸念している。

”職業訓練をうけても、今時、すごくいい給料がはいるよ、配管工の平均給料って、医者の平均給料と同じくらいだ”
去年 “60 Minutes’’のインタビューで彼は言っている、”みんな、もっとどうして、大学にいくのかについて考えたほうがいいと思う”

フェイスブックもアップルも、マイクロソフトの創始者もみんな大学を卒業していない。

彼は、年間20歳以下の学生20人までをフェローにしている。MIT, ハーバード、そしてダートマスとキャンパスを巡り、ネットワークを使って学生とのミーティングをしている。

フェローシップは学生のグループにビジネスのアイデアの実現の為に2年間で10万ドルを渡す。その間、起業家や、投資家、専門家とともにアイデアを磨いていく。2011年に始まって以来、1ダース以上のスタートアップが事業を興し、その中にはパーキングスペースを探すアプリや、薬を飲み忘れないようにするアプリも含まれる。

ハックMITを手伝っているMITの大学生は、”フェローシップは学生にとっては一つのオプションです、別に彼らのメッセージを支持しているわけではありません。”という。

実際、ハックMITは野心的で意欲のある若者をとらえるのとを引き換えに、30時間プログラムのコードを書き続けるためのコストを負担してくれる50以上のスポンサーマネー、グーグル、ツィッター、ベンチャーキャピタルをひきつけている。

これはThielとMITの初めてのもめ事ではない。2011年の時点でフェローになった学生は二人いた。MIT の入学管理責任者の Matt McGann氏はその二人にお祝いのメッセージを送っている。”2年後に戻ってきても、こなくても、上手くいくといいですね。”

以上が要約です。

大学を批判している割にはわざわざトップ大学から学生をリクルートするというのは、どうなのかな、とは思いますが、個人的には大学行くのと、行かないで、起業するの、どっちもありかな。もし、自分がこれだ、って思うものがはっきりしなければ保険の意味でも大学にいったほうがいいと思います。特に社会を生きる上でまだ人の基準というのが、学位とか資格なのかな、とも思うのですよね、彼だってスタンフォードをでて社会的な信用を得て、もしくは人脈を得て、ビジネスを成功させた、という点があるように思います。でも逆に、有名大学をでたからといってみんな成功するわけでもないので、それだけではたりない。

起業して上手くいかなくてまたMBAを取り直す人もいれば、とりあえず事業を始めてしまって上手くいってしまう人もいる、MBAにいったからといって、起業するわけでもなく、就職活動して、それでも思ったようなポジションをつかめない人もいますし。
ようするに、”起業”という観点からみるならば、大学やMBAというのは実は、始めから起業する力のある人のためのものではなくて、反対に、そこにいけば、誰でもある程度、最低限起業に必要な知識を得る事ができる、ということなのでしょうか。

先日スイスの連邦工科大学の学長が、大学に行きたいという人が増えているが、大学側は受け入れる人数の枠を増やすつもりはない、といっていました。理由は職業訓練制度が機能しているので、みんながそれぞれ自分に見合った職業をみつけるべきである、と。また、大学をでなくても、その道の勉強を続けていく中で、金銭的にもあまりかわらないか、もしくは職業訓練を受けた人のほうが上回る場合もあり得るからだと考えられます。

それにしても、選択肢があるっていうのはいいですよね、自分がやりたいことが明確な場合は。