全てのイノベーションが社会にいい影響を与えるためには・・・

3月の春休みの間には研修という名でたくさんの高校生がボストンを訪れます。

ここ最近MITやハーバードにいる研究者を訪ねたりする学生が増えてきて、春休みや夏休みには起業やイノベーションに関する話をすることも多くなります。日本の学生は積極的に発言しない、とのイメージがあったのですが、やはり学校の差もありますが、大学受験や進路に関して真剣に考え始める高校2年生くらいは前向きな発言や、かなり具体的な質問をする学生も多いです。特に理系コースにいくような学生は自分の実験結果が世の中にどういうインパクトを与えうるのか、また将来を考えてどのような大学、学部にいくかを真剣に考え始めるようです。

その中で一つ、ある学生が”イノベーションを起こすことは悪いこともあるのではないか” という話をしていました。確かに物事にはいい面と悪い面があります。良かれと思って発明したことも、悪いように使われる例というのは数多くあります。また悪いことに限って広まりやすい、という点もありますよね。

学校側も学生もレベルの高い大学にいかせたいし、いきたい。すると、テストされる科目の勉強には力が入ります。しかし、受験勉強だけをしてきた子たちが起業をしようとすると上手くいくのでしょうか?結局のところ何を作っていくにしても、人間の創造性やアイデアがその根源にあります。ビジネスとして成り立つのか、経済的に採算がとれるのかは金融機関が検証するポイントになるものの、それは倫理的、道徳的に問題ないのか、それが将来的に社会にどういうインパクトを与えうるのかということは、誰もといません。

だから、起業する人、したい人は哲学や歴史、道徳を実は、理科や数学以上にしっかり身につけて欲しいと思います。スタートアップの90%ほどは上手くいかないといいます、結局数字はあてにならない、でも確かなことは”誰”がそれをしているのか、ということ。だからベンチャーキャピタルも投資をするとき結局は”人”をみる、ということなのでしょう。

受験勉強ばかりして人としての教育を怠ってしまうと、のちのちもっと大きな反動があるように思います。

 

 

 

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大学での起業教育がトレンディー、ボストンカレッジも創設するアントレセンター

ボストンは大学と起業教育の結びつきが強いところです。
アントレプレナー教育では有名なバブソンカレッジまた、MITのマーティントラストセンターは数十年の歴史がありますが、近年ではノースイースタン大学、ハーバード大学、タフツ大学と大学内に起業を促進するセンターが続々とできています。そんななか、この夏、ボストンカレッジでもアントレセンターを作るという発表がありました。
http://www.bc.edu/schools/csom/research/sheacenter.html

(*ちなみにボストン大学とボストンカレッジは全く別の大学です)

ボストンカレッジといえば、コンサバ、カトリック系、リベラルアーツ、アカデミック色が濃いというイメージですが、とうとうここでも起業教育を大学にとりいれる動きがでてきましたね。
背景には、近年特にスタートアップが増えているということがあるのですが、ちなみにオンラインの投資サービスAngelListによるとここ7年間で3000以上のスタートアップがボストン近郊でできたそうです。

起業教育は、机の上だけで、理論武装しても結局自分で動いて、失敗も含め経験してみないと、本当の勉強にはなりません。こういったセンターではそういった機会を大学院(MBAに代表されるような)だけではなく、大学の学部生として学べ、サポートがうけられるというのが特徴です。
本来ビジネスは、”社会の問題を解決する”ものですが、自分が大学で学んだことが、どう社会に役立つのか、起業の種は色んなところに転がっているわけですが、それをどうやって形にしていくのか、起業教育は分野を問わず、求められています。

関連記事:
タフツ大学が取り組む起業教育

バークリー音楽大学の起業教育

”起業家”の定義とは?

Worthless, Impossible and Stupid(意味がなく、あり得なくて、馬鹿げている)というこの夏に出版された本の著者、ダニエル アイゼンバーグ氏のケンブリッジイノベーションセンターで開かれたサイン会をかねたトークショーにいってきました。
アイゼンバーグ教授は、バブソンカレッジのバブソン・アントレプレナーシップ・エコシステム・プロジェクトのディレクターをしています。

彼はイスラエル人ですが、ハーバード大学で心理学の博士号をとった後、イスラエルで、起業について学び、イスラエルのハイテク関連のスタートアップを始め日本やその他、多数の国にまたがる仕事をしてきました。

この本では、世界中の起業家の事例が沢山でてくるので、読み物として、おもしろいです。私は起業するとは自分の人生を探求していくことなのかな、という気がすごくしましたね。この本にでてくるどの起業家も、まっすぐ平坦な道をいっているわけではなく、どの人も困難にぶつかったり、ぎりぎりのところを歩いていたりします。読んでいるほうは、なんて激しい人生だろう、と思いますがきっと、当人達はやりたいことを追求しているだけなんだろうとも思います。

まず、彼は起業家精神とは 他の人が認識できない、もしくは見逃している需要と供給のギャップを見いだし、そこから ”驚異的な価値” を創造し、それに見合うリターンを受け取るということ、を前提にしています。だから、個人事業や中小企業のオーナーは必ずしもそれにあてはまらない(場合が多い)ということを主張しています。スケールを大きくして、金銭的なリターンをあげられなければ、起業家とはいえないそうです。(このあたりの点は、トークショーにきていた、人の中でも意見が分かれました。)自分の商品、サービスに金銭的な価値がついて始めて、価値を創造しているといえる、と彼は主張します。

本の前半では、起業家の3つの神話のうそ、について書いてあります。
• 起業家はイノベーターでなければならない。

• 起業家は専門家でなければならない

• 起業家は若くなければならない。

これらに対して、そうではない事例をあげて、反論しています。

大抵どの起業家も、みんなに反対された事業を起こしています。というのも、みんながいいといったものには手をださないからです。みんなに馬鹿げてる、とかあり得ないといわれても、自分を信じて、周りをまきこんでなんとか、やってしまうから、普通の神経の人は起業家にはなれない、というわけです。

そして、もちろん、失敗もたくさんあります。ハーバードビジネススクールのビジネスプランの賞をとったビジネスでさえ、上手くいかないこともある例をあげています。

今回のトークショーでは、30人近くの人がいたでしょうか、著者が一方的に話すというより、観客のだす、質問に答えるという形をとったので関係性が一気に縮まって面白かったです。若者の起業に対しては非常に懐疑的でしたね、特に、若者の起業がすばらしい事だらけ的なメディアの報道には、辟易されていました。が、それに対して真っ向から挑んでいる若者もいたりして、非常にエキサイティングでした。

あと、彼が見なしているレベルの”起業”というのは、自分のしていることを100%以上愛せないと、とてもできることではないな、と思いました。まさに自分自身の人生を120%生き抜くというか。。。どこか、大衆に対する共感力が高い、成功する芸術家的な香り、それと同時に、緻密さのようなものも感じました。アイデアやビジョンはとてつもなく、大きく夢見ていると感じられても、階段を丁寧に少しずつ、一歩ずつ確認して上っていくような。。。

又、どの話にも共通していると気ずいたのは、リーダーシップを発揮して、チームを作る力です。
リーダーシップは起業家でなくても、どの分野の世界でも発揮できるものですが、逆に起業家はリーダーでなければいけないようですね。リーダーシップをとるには、才能も必要なんじゃないかなあ、と思って調べてみると、実際、”最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと”という本で、リーダーには才能が必要だとのべられています。どんな、才能が必要かは、是非本を参照してみてください。

又日本人として、実業家、社会起業家の杤迫 篤昌(とちさこ あつまさ)氏の例が選ばれていて、銀行口座をもたない出稼ぎ移民の送金を手助けをする金融機関を立ち上げたことを紹介していました。彼は、三菱東京UFJ銀行(もと東京銀行)のバンカーで27年勤めてから起業された方です。日本人だけど、南米の人達の役に立つような起業をされました。普及させたいとの思いから、”支援”という形でなく、あえて、ビジネスという形をとった例です。

海外勤務が長くて、これから早期退職でもして、第二の人生を始めようか、と思われている方の起業の参考に、なるかもしれません。

本によると、起業する年齢の平均は男性40歳、女性41歳、そしてそのうち23%は55〜64歳のベイビーブーマーなんだそうです。そして、彼もトークショーの中で色々な条件の整う40代以降の起業をすすめていました。

結局、自分の好きなビジネスを追求して、あとから振り返ってみたら起業家になっていた、ということなのかもしれませんね。今までにない新たな市場を創造したい、と思っている方は、読んでみて損はないと思います。

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Worthless, Impossible and Stupid: How Contrarian Entrepreneurs Create and Capture Extraordinary Value

タフツ大学が取り組む起業教育

タフツ大学が、アントレプレナーシップに力を入れ始めた、という記事が、11月11日のボストングローブ紙にあります。

1年ほど前に、起業リーダーシップ学部長は代わり、10%の学部生だけが取り組んでいたこのプログラムをもっと学生の中に広めようとしています。賞金10万ドルのタフツのビジネスプランコンペへの申請件数は18から109に増えました。

Tufts.ioとよばれるこのアントレプレナーシップコースは、アカデミックな講義と、メンターによる、指導でなりたちます。そこでは学生がどうやって起業をするかを習います。現在、世界で重要な製品は大学生くらいの創始者達が作ったものが多数あり、学生にビジネスがすぐにでも始められる可能性がある事を示しています。このコースでは、“幸福が成功につながる” ということを教えたいと、アメリカンアパレルの創始者でTufts.ioで教えているダブ・チャーニーはいいます。ちなみに、彼もタフツ大学の学生の時に、アメリカンアパレルを始め、中退しています。

そして、タフツのスタートアップを支援する為に、タフツベンチャーファンドがあります。
タフツ大学は国際関係論や、外交政策で有名ですが、タフツの目指しているものは、その強みに経済的な知識をブレンドすることだそうです。MITスローンスクールやハーバードビジネススクールのような、MBAスクールを作るのではなく、タフツのもっている強みをいかした生産的なエコシステムを作ることが目的です。

起業リーダーシップ学部が、大学内を横につなげているという感じになるのでしょうか。
アカデミックなことをいかにビジネスにつなげていけるか、という実践的なプログラムになるようです。

理系の学生が、テック系の製品を作って、イノベーションをおこす、というのは一つの道ですが、文系の学生だって、サービスに特化して、理系の学生の技術的なサポートがあれば、イノベイティブな商品はできそうです。また、国際関係論を学ぶ学生なら、世界の問題に焦点をあてた、社会起業的な分野のアイデアもでてきそうです。総合大学のいいところは、様々な学部があるので、それを上手く横につなげるパイプがあれば、無数のアイデアを生む可能性がでてくることでしょうか。学生も、自分の勉強が就職活動の為だけでなく、誰かの役に立つ事がわかれば、きっと学習意欲がわくと思います。

こういった方向性の、起業教育なら日本の大学もやれそうな気がします。

大学による、生き残りをかけた起業教育

日本にも沢山の大学があり、その中で、生き残りをかけて その学校の特徴をどうやってだしていくのか、大学も真剣に ”経営” ということを意識しなければならなくなってきました。
マサチューセッツ州だけで、100以上の大学があるといわれていますが、近年学生数が少ないリベラルアーツカレッジが経営難に陥っています。そんな中、学生数 約1400人のリベラルアーツカレッジである、ハンプシャーカレッジの新たな試みの話です。

ボストングローブ紙 11月1日

のんびりした学校が起業家を刺激する

先週、ハンプシャーカレッジは在校生か、最近卒業した卒業生が起業する為の 100万ドルの支援ファンドを設立したと発表した。
起業家とイノベーションの為の ”シードファンド(事業を始める為の元資金)” と呼ばれ、大学は20万ドルをこれから5年間、成功する確率の高いアイデアに分配する予定だ。

この100万ドルの資金はベンチャーキャピタリストで,、ハンプシャーカレッジの卒業生でもあるMichael Vlock氏と、 彼の妻のKaren Prizker(アメリカでも有数の資産家であるシカゴのPrizker家の出身)によって贈られた。この資金をどこからの干渉もうけることなく、自分たちの夢の実現にむけて使ってほしいといっている。

アメリカ国内のリベラルアーツカレッジは近年、カリキュラムにアントレプレナーシップ論や、その文化、補助金を出したり、夏のインターンシップ等を取り入れる努力をしている。

ハンプシャーカレッジのケースはまだ計画段階で、これからどのようにして、資金提供をするスタートアップを選ぶかをきめていかなければならない。12月までに希望者は書類を提出し、2月に選考があり、3月に最終的に賞が与えられるだろう。まだ はっきりはしないが、だいたい1〜4社くらいに資金提供できればいいと Vlock氏は思っている。

この学校には先攻というものはなく、自分で集中して勉強したいことを選択するようになっている。
”ハンプシャーカレッジはすでに 起業家的学生をサポートするようにデザインされているのです。” と、現役の学生はいう。

実際、2012年で 雑誌 フォーブスの最も ”起業家精神のある大学” の20位にランクインしている。卒業生の中には、Stonyfield Farm Yogurtの創業者や、オーガニックの肉を売るApplegate Farmsのオーナーもいる。Vlock氏によると、学生の理想は社会の問題を解決するノンプロフィット団体を設立することかもしれないが、彼は社会に還元できる、利益を追求したビジネスを望んでいる。
“次のFacebookみたいなものを立ち上げるような人が現れないかな?”

大学の起業センターの立ち上げにかかわったWong氏は、何か具体的な形になるもので 世の中を変える必要があると思う学生に資金が提供されると信じている。多分野にまたがった学びを通じて、ハンプシャーカレッジの学生は、ビジネスのみを先攻してきた学生より、広い視野で物事をとらえ、新しいアプローチで物事を解決するだろう、とWong氏はいう。

”リベラルアーツカレッジでは、アントレプレナーシップというのはビジネススクールとは違った意味でとらえられるんです。やり方も違います、といっても、我々はピザ屋を始めるつもりはないですよ。”

以上が意訳になります。

アメリカでは卒業生が母校に対してこのような大きな資金提供を、寄付もしくは基金として支払うことがよくあります。
大抵は、奨学金だったり、学校施設を維持するため、また人件費に支払われるのだと思いますが、このように明確に”起業資金”と明記することで、高等教育機関の意義が少しかわるのかもしれません。

このような背景には、アメリカ国内のリベラルアーツカレッジが抱える問題も見え隠れします。少数で、教授と学生の距離が近く、勉強や社会生活を営むには整った環境であり、一流の大学院にいくには一部のリベラルアーツの大学を出た方が確実とさえいわれていますが、一方、学生数が少ないために、卒業生からの寄付が非常に重要になっており、二極化が明確になりつつあります。極端に言えば、いろんな意味で成功している卒業生が必要なのです。

この調子でいくと、起業学という学位がとれる日がくるのでしょうか?
実際、ビジネスは学校でいすに座っているだけでなく、実践して、失敗を重ねて学ぶものでもあります。週2日学校で、3日は自分のビジネスの為に働くとか?

そういう意味でも、マスチャレンジは起業の学校だといえますね。
Hampshire College
http://www.hampshire.edu/