クリントングローバルイニシアチブと提携したハルトプライズ、100万ドルは誰の手に?

この3月に世界中にあるハルトビジネススクール主催で ハルトプライズ予選が行われましたが、先日その最終コンペがニューヨーク市内で行われました。
今週 は国連総会も行われ、ニューヨーク市内はオバマ大統領に、クリントン元大統領、各国首脳、要人を迎え、至る所に警官と、物々しい雰囲気でした。

今年のテーマは、2019年までにスラムに住む2500万人の人達を慢性疾患(循環器系の病、癌、糖尿病等)から守る為に何ができるのか、都市のスラムの健康をどう守るのか、ということでした。
ボストンの代表はチューインガムでスラムの健康を守るというチームで早速ガムが出来上がっており、会場に配られていました。
そして去年のボストン代表チームであり、また本戦も見事に勝ち抜き100万ドルを手にした虫を使ったバーを提案した、チ ームの商品も 配られました。

私も色々なチーム、人達のピッチを目にしますが、中には本当に、人を惹き付ける話し方をする才能のある人というのがいて、このチーム代表であるMohammed Ashour氏もその一人です。去年の予選のピッチを目にした時はとても医学部出身とは思えないカリスマ性を感じさせました。 代表に選ばれたあとに、実際もう一回スラムにいかないとね、なんて軽く話していた彼でしたが、当初6人で始めたこのプロジェクト、現在は2000人ほどが従事する大プロジェクトになっています。賞として100万ドルを手にした事以上に、このクリントングローバルイニシアチブのもつネットワークにつながることが、一ビジネスを産業に育てることになったと言います。

ハルトビジネススクールの各校が選んだ世界の代表6組が彼らのアイデアを披露しました。訓練されたはちを使って、糖尿病を検知するキットや、視力をあげることで生活のクオリティをあげるという理由から5ドルで眼鏡を作るキット、スラムでは病院の患者の50%は傷の治療であり、沢山の人が傷が原因でなくなることから、傷の治療を簡単にできるようにするポンプ、ビジネススクールだけでなく、学部生のグループを含めた6つのグループが600人ほどの前でファイナルピッチをしました。

ジャッジにはノーベル平和賞を受賞したムハマド•ユヌス氏を始め起業家等5人が参加し、6つのピッチについて壇上で公開検証しました。

こういうプロセスが見えるのが観衆には面白いですね。
訓練したはちを使うアイデアはみんな面白いと思っていましたが。。。

インディアンスクールオブビジネスのNano healthが100万ドルを手にする事になりました。
スラムには健康保険に入っている人はほとんどいないので、自分から病気の予防のために病院にいく人はいません。そこで “Saathi”(友達という意味)というバッグの中に、バイタルや、病気のリスクを検査できるセットをいれ公衆衛生管理者がそれをもって巡回します。病気だと診断された場合はその後もモニタリングを続けます。そこに薬局や、医者のネットワークも加えることで、ワンストップショップになるという概念です。
このチーム実は、最終ピッチの最中、一人が(貧血?)気絶してしまい、途中で中断になるというハプニングがあったのですが、それを乗り越えての受賞、きっと喜びも倍だったと思います。

公開討論ではムハマド•ユヌス氏言わく、“色々なすばらしいアイデアがこんなにあるのに、我々は今まで一体何をしていたんだ??”

確かに、世の中にはきっとそういう事例が沢山あるのでしょう。そして誰かに解決されるのを待っているのかもしれません。世界を変えたい、変えられると信じている若者達のピッチをきいて、隣に座っていた人が “世の中、ひどいことばかりではないわね。希望を感じたわ” といっているのが印象的でした。

参考記事:

賞金100万ドルをかけたHult Prize、 チューインガムがスラムの健康を守る!

インドのシリコンバレー、バンガロール

バンガロールは、インドのシリコンバレーと呼ばれITビジネスの中心地です。
バンガロール空港はガラス張りのとてもモダンな空港なので、 町も近代的な建物が結構建っているかと思うと、いやいや、それはまだほんの一部の話で、そういうエリアとそうではないエリアが混在しているというのが今の状態です。

近代的な建物

今回バンガロールに訪ねたある事務所の所長は大学の博士課程をとるのにインドに数年滞在していたことがあり、その後食料のフェアトレード関連のビジネスをたちあげました。現在は、大学、研究機関も含め、スタートアップ等の対インド投資の手伝いをしています。 事務所は、バンガロールのそれほど近代化されていないエリアにあったせいか、事務所の近所を歩いていたら、赤ちゃんと、子供をつれた女性に腕をつかまれ、“1ルピーをください!”といわれ、追いかけられ、さすがにびびりました。内心、“1ルピーでいいの?”だって、2円にもなりませんよ。。。所長いわく、そういった女性達は組織化されているので、お金を渡してはいけないと。まさしく、映画『スラムドック&ミリオネア』の世界そのままの話をされていました。(ボストンでも路上でお金を集めている人達はよくいますが、彼らには通りすがりの人達がよくお金を渡しているのとは対照的です)

バンガロール滞在はほんの数日でしたが、町の中を歩いたり、車で移動していると普段の生活が少し覗けました。 ゴミの集積所らしきところが町のいたる所にあるのですが、ゴミ袋に全てのゴミが入っているわけではないので、そのままそこに犬や牛がたむろして、動物が渋滞の原因になっていたりします。それでも、人々は動物にやさしいのか、(宗教上の理由か)せかすこともなく、妙な共存がうまれていましたね。都会でもそういう衛生状態なので、世界のエネルギー問題や公害なんて話をしたところで、全くピンとこないだろうなあ、というのは感じました。

車の前を牛が通過中

車の前を牛が通過中

確かに、昔はプラスチック製品やスプレーのようなものはなく、ゴミをそのまますててもある意味、自然のコンポストになっていたのかもしれませんが、都会でもその状態なので、サステナビリティとか、省エネとか言う話以前の問題だということを所長もいっておられました。
これだけ、人がいて、市場が大きいと、ビジネスチャンスも多いし、新規事業も大変だけど、やりがいがありそうに思ったのですが、所長いわく、“中国人とインド人との大きな違いは、中国人は上昇志向が強いが、インド人は今いる自分の地位からどうやってもっと向上しようとか、よりいい職業につきたいとか、どうやったら自分の生活の質がよくなるか、なんてことは考えてない人が多いことなんじゃないかなあ。でも、みんな自分のいる今の地位や肩書きにこだわったり、タイトルはすごく大事。なんだかんだいってすごい階級社会だから。”

町から1時間も走ると、扉のないような建物に住んでいたり、屋台のような商店を多くみかけましたが、それでも電線は通っています、あと20年くらいたつと景色もずいぶん変わるのでしょうか。

ドイツの会社が注目するマサチューセッツ州の製造業

去年から、マサチューセッツ州での製造業への回帰に関する新聞記事が時々目についています。アジアに製造業の拠点が移ってから、スキルのある労働者の育成ができず、製造業が戻ってきても(きたくても)労働者がいないというギャップを埋める為に、ドイツの会社ジーメンスが工業学校のような職業訓練をする学校にソフトウエアを購入するために6億6千万ドルを寄付したという話がありました。(ボストングローブ4月16日)

製造業の労働者といっても、簡単な組み立てをするわけではなく、精密機械であったり、飛行機であったりと、主にハイテク関連の産業の工場で働く労働者にも高いITスキルが求められています。ところがこのような、職業訓練学校は、最近では、予算もたりなくソフトウエア等を購入することができません。
マサチューセッツ州の製造業は他のセクターを引き離し州のGDPの13%にもなっています。ところが、若者は製造業はもう将来がないと思ってしまっており、教育もハイテクコンピューターを使って、製造することに関わる人達の為の教育に投資していません。

しかし、それを違う目でみているのがドイツのジーメンスです。90年代からジーメンスは世界中の学校にソフトウエアを提供することをしてきました。製品のライフサイクルマネージメントのテクノロジーを、ダイソンの掃除機やNASAの火星探査機、その他何千もの会社が製品をデザインして製造するのに使っています。2年前から、ジーメンスはマサチューセッツ州の製造業に投資を始めています。このエリアの教育に注目し、ソフトウエアだけでなく、コンピューターラボや、先生達にも教育をします。

製造業では次の10年で高齢化によって10万人ほどのポジションがあくといわれており、平均年収も7万5千ドルほどの仕事になりますが、明らかにスキルのある人材を確保できていないのが現状です。問題は、企業はこの州は研究開発が得意で知的労働のエリアであり、製造業はあまり得意ではないし、コストが高いと思っていることです。
しかし、この問題は雇用を作りだすということだけでなく、イノベイティブでいるということにとって重要な問題です。例えば、アジア、得に韓国のように製品を作る過程において、デザインをよく学んできている国は、今では電化製品のデザインではリーダー的存在になっています。

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ドイツは職業訓練制を取入れている国だけあっていわゆる、工業専門学校の位置付けがアメリカや日本とは違います。戦後、日本はアメリカの教育システムに倣ったわけで、大学にいくことが一番いい、という流れができてしまっていますが、”もの作り国家” というのであれば、もの作りの”教育”の部分を本来大事にするべきのような気がしますね。

それにしても、その州の産業を担う分野の教育機関に外資が入ってくるというのは、(しかも高校レベルで)かなり大胆な感じがします。アメリカのこういう柔軟性がアメリカ経済を前進させることを担っている一因でもあるのではないでしょうか。産業と教育をつなげていく事が、失業率を下げる可能性があることにアメリカ人も気ずき始めたようです。

関連記事:
失業率を改善させる可能性のある職業訓練制度

学校が地域にどんな影響を与えるのか -治安の悪い所にできるSTEMアカデミー-

ボストンとその近郊は結構治安がいい方だと思うのですが、その中でもボストン市内で発生する殺人事件の約7割が発生しているエリアがあります。
まさにそのエリア、ロックスベリーに新しくSTEM分野(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)に重点をおいた中学、高校ができることになりました。
7年もかけ、費用7070万ドルほどのこのプロジェクトがやっと州の学校校舎管理局に承認され、ローン申請が通れば工事が来年から始まりまることになりました。(ボストングローブ3月31日)

STEM分野がこれから人材が必要とされる分野、と位置付け、古いもともと女子校だった校舎を立て直して、STEM分野にフォーカスした学校を作ることで、この辺りの高い失業率を将来的に改善するのではないかと考えられています。ここのところ、ボストン市内ではスペースや費用の問題もあり、10年以上新しい学校が作られておらず、郊外での学校建設が進んできました。今回学校を作ろうと計画している辺りは、移民も多く、英語の能力が不足している子供達が多かったのですが、だんだん成績もあがってきたこと、ボストンの市長がかわり、古い校舎への建て替え投資というものにも力が入るようになったことも背景にあるようです。

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日本の文科省の調査でも、親の学歴、収入と子供の学歴の相関関係があきらかになっているようですが、経済的に余裕がある家庭の多く住む治安がいい所に、いい学校を作るのではなく、悪いエリアにいい学校を作ることで学力の底上げをしよう、そして就業率をあげて治安をよくしようという取り組み、かなり大胆だと思われます。そもそも学校にちゃんと通ってこない子達にそんなSTEM分野のような難しいこと教えようとしても授業が成り立たないのではないか、という意見も聞かれますが、教育は夢を与える事、頑張ってほしいです。

関連記事:
理系女子を育てる取り組み

スタートアップに資金を提供するようにNPOに寄付をする団体-SheGives-

アメリカにいると、いろんな場所で寄付をする機会があります。それはチャリティーイベントであったり、電話での寄付のお願いであったり、ダイレクトメールであったり、同窓会の寄付だったり、近所の子供が学校での行事の為にお金を集めにきたり、色々です。最近はクラウドファンディングの認知度もあがってきていますし、寄付をする側だけでなく、集める側にも、なりえるわけですが、寄付ということが、特別な人が、特別な時にする事ではないというのはいい事だと思います。

2012年のGiving USAのデータによると、全米での寄付金合計額、3160億ドルのうち個人からが72%、企業から6%、そして、内訳は宗教に32%、教育分野に13%わたっています。人は自分が価値が見いだせるもの、そして信じているものに寄付をする傾向にあり、年収が高いから沢山寄付するとは限らないそうです。

そんな中、ボストンで成功している女性の起業家達が地元のNPOをサポートする為に、去年SheGivesという団体をたちあげました。(ボストングローブ 2月24日)SheGivesは個人投資家や起業家、友人達からこの5ヶ月で23万5千ドルを集め、8つの社会的なミッションの為に活動しているNPOに資金を提供する予定だそうです。8つのNPOの中には以前にこのブログでも紹介したScience Club for Girls(理系女子を育てるプログラムを提供)やその他、アートセラピーを行うRaw Art WorksCollege Bound Dorchesterという高校生の為に大学進学を手伝う団体等があります。

去年この団体を立ち上げたボストンヘッジファンドのパートナーでもあるバーネットさんは、多くの女性達は、もっと慈善団体に寄付したくても忙しいので、どの団体が価値があることをしているのか調べる暇がないということを知りました。そこでSheGivesがデューディリジェンス(多面的な企業調査)を行い、メンバー制にして現在約100人のメンバーがいるそうです。メンバーは2年間は毎年1000ドル〜2500ドル寄付しなければなりません。(もちろんもっと寄付したければ、それでもかまわないそうですが。)

寄付をする相手は誰でもいいわけではない、得に成功した人ほど、どこに使うかということはシビアになるようです。自分たちが寄付する団体は、社会に本当に貢献しているのか、世の中に必要とされているのか、ということを考えると、NPOでも、一般企業でも同じといえそうです。
そして、SheGivesを立ち上げたバーネットさんは “寄付することで違った意味のリターンをえることができる” といっています。それは、自分たちが気にかけている分野において状況を変えようとして頑張っている人達や団体に自分も貢献できると感じること、だそうです。

以前紹介した、“ハッピーマネー、賢く使う科学”という本で、他人に投資することで人は幸福を感じる、とありましたが、まさにその幸福感が彼女達のリターンだといえそうです。

関連記事:
理系女子を育てる取り組み
お金で幸福が買えるらしいことが判明-ハッピーマネー、賢く使う科学-

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