医療業界に進出する3Dプリンター

ここ数年の3Dプリンター人気で、靴におもちゃ、ジュエリーまでコピーできてしまうようになり、この分野はどんどん発達しているのですが、医療の分野にも進出しています。

べスイスラエル病院のドクター・チェンが気管狭窄の為呼吸障害のある患者の気道スタントを3Dプリンターで作りました
従来の品は個々の患者にぴったりフィットするものではなかったですし、オーダーで作った場合、数ヶ月かかり、それでもぴったりとあったものでもありませんでしたし、サイズがあわないことで滑ってしまったりする可能性がありました。

これを開発したドクター・チェンは患者のCTのデータから患者の気管にぴったり合うサイズのものを数日で提供できるだろうといっています。
3Dプリンターにはシリコンは使えなかったので、プラスティックの型を3Dプリンターで先につくり、そこにシリコンを注入したそうです。
この製品のクリ二カルトライアルは来年から始まります。

***

以前、3Dプリンターで作った義手の話がありましたが、
メディカルデバイスの分野にはまだまだ進出の余地がありそうですね。

病院が主催するピッチイベント

ボストンには全米でも1,2位を争うような病院や様々な大学病院、専門の研究所、製薬会社のリサーチセンター等がたくさんあり、バイオ関連のスタートアップも集中しています。

先週、ボストン子供病院で賞金3万ドルをかけたシャークタンクのようなコンペティション、第一回イノベーションタンクがフィリップスヘルスケアのスポンサーで行なわれました。
子供の場合、大人と同じ病気だとしても、人的な対応や使用する機器類がかわってくるでしょう、小児医療分野を改善することも、このコンペの目的だったようです。
パネルにはベンチャーキャピタリスト、医師、テレビ番組のシャークタンクに出演しているデイモンド・ジョン氏らがそろいました。デイモンド・ジョン氏はファッション関連の会社のオーナー兼、投資家でもあります。
日本のイメージだと、病院がビジネスプロジェクトを率先してやるという空気は無いと思うのですが、やっぱりここはアメリカです。

賞金を得た3社のうちの1社CareAline は自分達の子供が闘病生活をするにあたり、胸部や腕から薬を体内にいれるための多様なカテーテルを管理するバンドのような商品を開発しました。
子供は動きが活発ですし、じっとしていないのでチューブがずれたり、固定が上手くいかなかったりすることが多いのでしょう。開発者のお子さんは残念ながらなくなってしまったのですが、商品は他の子供達にも役に立つと思い、商品化したといいます。

もう一つはボストン子供病院の研究者が開発した HubScrub という、病院で使う医療機器全般を消毒してくれる機械です。

病院では車椅子も消毒するんですね。。。そう考えると一日中何かを消毒しているスタッフもこれがあると、仕事がかなり楽になるかもしれません。消毒したいものをここにいれると、3分以内に消毒してくれて15リットルの水の使用で済むそうです。
食器洗いのような感覚でしょうか。最近、感染症が問題になっているので、消毒ということを考えると益々需要が増えそうな機械です。

3つ目の会社は、8歳から18歳までの子供達を対象に、体重をコントロールするアプリを開発した KurboHealth です。
このアプリは子供達が食べたもの、どのくらい運動しているかということを追跡し、その情報を分析し、指導していきます。このアプリの目的は最終的にはアプリにたよらなくても、自分で習慣をコントロールできるようにすることです。
これって、子供だけでなく、大人にも必要な感じがしますね、生活習慣病の予防になるかも。

こういった、病院主催のピッチイベントは数ヶ月前にブリガム・アンド・ウィメンズ病院でも行なわれたそうで、いままで一般的なピッチイベントに参加していた医療関連のスタートアップも今後直接、病院にアプローチできる機会が増えるかもしれません。

バイオ産業のブックオフ?

過去のプロジェクトで長年使用されずに実験室の冷凍庫に保管され、いつかは処分することになるであろう細胞サンプル、タンパク質、抗体等、アメリカのバイオ関連の研究室の冷凍庫には10億ものバイオリサーチの材料があるとの試算があるようです。それを売買するマーケットKerafastがあります。
確かに、現状実行されているプロジェクトにスペースを使いたいでしょうし、自分たちにとって不要でも他の人には役に立つかも、と考えられます。簡単にいえば、バイオ産業のブックオフ?

ボストングローブ10月21日によると、
2010年にこのサービスが始まり、初年度は10の研究所が参加していましたが、この夏100番目の研究所がリストにはいりました。ボストンではボストン子供病院、MIT, ハーバード、マサチューセッツ州立大学等が含まれます。扱うものは、癌、ステムセルなど12の研究分野にわかれており、それぞれの商品には誰が制作したかやどういったものかという説明がついています。値段は$65から$6000以上のものもありますが、平均すると$500程度だそうで商品の発送は海外にも行われます。
サービスを使うほうの研究者にとっては商品によっては、自分で作成したら何ヶ月もかかるものもあり、それをすぐに買える事は魅力であることや、こういった商品には知的所有権が含まれるため、法的な書類の準備といったものもこの会社では行ってくれるので、小さな研究所で人手がないところでは助かるようです。

バイオ産業の細かいことは正直よくわからないのですが、なんか便利そうだけど、怖い感じがしますね。。
バイオ関連のスタートアップというと、普通の人にはわかりにくい専門分野のもの、というイメージがあったのですが、ある意味わかりやすいしくみです。大抵が液体らしいですが、サンプル品としてなら海外発送してもいいんですかね?細胞もグローバル化?

トラウマを消す方法

サイエンスフィクションが現実になりつつあります、少なくともねずみの実験では。

ここ数年のMITの実験成果は、別の記憶をうえつけたり、本当の記憶を再生させたりすることでしたが、薬と行動セラピーで以前に起こったトラウマを消し去る事に成功した、とMITの科学者が発表したことが1月17日のボストングローブにありました。

この研究はまだ人に活用できるものではありませんが、どうやって記憶が形成され、維持されるのかという質問に対する新しい洞察をなげかけるものであります。
MITのピカワー学習・記憶研究所の所長である、ツァイ先生はもともとアルツハイマーの研究をしており、2007年に失った記憶を再生させる試験薬を特定することに成功していましたが、それが心的外傷後ストレス障害を抱える人達にも使えるのではないだろうかと考え始めました。
ツァイ先生のグループは学習と記憶に関係する遺伝子を活性化するHDAC抑制剤と呼ばれている合成物の種類から治験薬をためしました。
心的外傷後ストレス障害を抱える人の治療で安全な状況下でひどい記憶を新しい経験で書き換えるというやり方がありますが、これはいつも機能するとは限りません。そこでツァイ先生は薬がこの有害な記憶を書き換えることができるのか考えました。
記憶喪失の場合にこの薬を使う場合は、長期間の使用になるので副作用が心配されますが、恐れのようなネガティブな記憶を消すのにはその心配はあまりなさそうです。

2013年にスイスローザンヌ工科大学のバイオ、ニューロエンジニアリング関連の大きな研究所(ヒューマン ブレインプロジェクト含む)がジュネーブにできましたが、そのイベントのスピーチで学長がこれからは、脳の時代になる、と発言されていましたね。(ローザンヌ工科大学というのは英語圏でない工科大学の中では世界トップ3に入る大学で、その影響力もかなり高い大学です。)

確かに、脳の研究というのはこれからますます進む分野なのでしょう。友人の、ニューロサイエンティストに ”人って考え方を変えたりすることで病気を治したりできると思う?”ときいたところ、”そういうことはあると思う、それが今、科学的に証明されようとしている過渡期だから、実際、病院には瞑想できる所とか、ヨガができる所があって、私達が自分たちで実験して効果を確かめているの。私は太極拳に興味があるけど” と冗談か本当かよくわからない答えがかえってきました。
今までは、スピリチュアルな部分と、科学がずいぶんかけ離れた場所にあったような気がするのですが、これからはこの差が縮まってくるのかもしれません。

遺伝子検査の現実

去年、アンジェリーナ • ジョリーが乳がんのリスクをおさえる為に、乳房切除手術をしましたが、その決断をさせた、遺伝子検査。世界中の女性がこの報道にはぎょっ、としたと思いますが、こういった遺伝子検査、12月30日のボストングローブにはライフサイエンスの科学者の中でも、適正な使用方法に関して一致した見解を示せていない、という話がありました。ヒトゲノムが解析されて10年たっても、まだ、遺伝子検査は主流になっていません。テスト費用は依然として高価で、保険の対象外だということ、テストのことをよく知らない人もいれば、テストをして、もし不治の病をみつけてしまったらいやだから、知りたくないという人達もいます。

その中で限定的な使い方、例えば、ダウン症診断や、ガン治療の為の遺伝子診断といったものは広まりつつありますが、ヒトゲノムの全解析には$5,000 から$10,000かかります。遺伝子の変異の意味がまだよくわからないことや、診断はできても、治療ができないということもあること、一部の専門家にいわせると、検査はまだ高額な金額をだすのに値する物ではないといいます。現状では検査を絶対した方がいいという根拠がない。

このように、大多数の人にとって、現時点であまり意味のないゲノム検査ですが、今年からボストン子供病院でうまれる乳児480人のうち半分に対して遺伝子解析を、残りの半分は通常通りの乳児検診を行う予定だそうです。これは5年計画の研究になり、遺伝子がどのように乳幼児期の段階における治療とその結果に影響するのかを調べるそうです。これは子供によっては、一部の抗生物質を使用することで難聴をひきおこしたりする可能性があるので、薬を安全に処方するためにも、調査は役に立つ可能性があるといいます。しかし、このようにはっきりとわかるケースはまだ少なく、まだ、不明瞭なことが多いのが現実だそうです。

一方、Editas Medicine というケンブリッジのスタートアップは不完全なDNAを修繕する技術を開発しています。遺伝性の難病であるハンチントン病や鎌状赤血球症等、今まで治療法がほとんどないものにも新たな可能性が開けているようです。

約250の病気を検査すると言われているサンディエゴの23andMeという会社が行う99ドルの唾液検査は11月FDAによって販売禁止にされてしまいました。米国臨床遺伝学会は個人に完全なゲノム配列検査を推奨はしていません。ただし、家族に病歴があり、遺伝リスクの高い患者は考慮すべきで、以下のものは、遺伝子解析で明らかになる病気で、なんらかの処置ができるものだということです。
乳がん、卵巣がん、細膜芽細胞腫、内分泌腫瘍、心臓病

昔、”ガタカ”という映画があって、遺伝子によって職業が決まってしまう話なのですが、その遺伝子に対抗して、どうしても宇宙にいきたい主人公が、なんとかして、他の人と入れ替わり、思いを成し遂げる話です。結局、人は意思があれば、いろんな困難を乗り越えられるという運命以上の予感を感じさせてくれる話でした。

遺伝子解析は、病気の治療という観点もありますが、その他に、性格や、資質、体格等様々な情報がわかります。生まれた時に検査をすれば、この子は能力的にスポーツ選手になれるとか、なれないとかいうことが、わかってしまう。。。今の時代、昔と違って、絶対に家業をつがなければいけない人や、決まった職業に就かなければならない人は、少数派であり、大多数の人には職業選択の自由があります。それによって余計に何をしたらいいのかわからない人は将来的に、職業適正調査として遺伝子テストをうけたり、会社によってそういうものを採用する所が現れたりということがありえるかもしれません。もしくはそういったものを規制する法律が整備されたり。。
それでも、人には可能性があるということ、それが夢でもある、という部分は壊したくないですね。

ガタカ [Blu-ray]