企業の利益と労働者の利益の両立

”リッチになっていい生活をしたければ、起業しなければ不可能だ”、という事をアメリカ人が言うのをききます。

起業した人や、高給取りの経営者に大半の平均的労働者が搾取されてしまう、という危機感。これは企業にとってはまるでいいことではない、企業が成功する為には労働者に追加の教育やトレーニングをして平均的な従業員の満足度を、生活のレベルをあげる事が必要であり、企業の成功と労働者の成功を両立することが、グローバルな社会でさらに企業が競争力つけることに貢献するというハーバードビジネススクールの研究が発表されました。
教育、職場での訓練、輸送インフラを改善することで米国の将来的な競争力は増すと考えています。(ボストングローブ9月9日)

この研究結果はポーター教授、リブキン教授が2013-14年にハーバードビジネススクールの卒業生2000人にグローバル社会でのアメリカ企業の競争力、そして今後の見通しについてアンケート調査したものに基づいています。

回答した40%の人達が、CEO、マネジーングダイレクター、創業者であり、この3年間でアメリカ人の給料があがると思っているのは27%の人たちであり、41%は下がると思っていました。31%の人達はアメリカ企業がこの先もっと競争力がつくと思い、難しくなると思っているのは26%です。

“経営者は企業の見通しには楽観的ですが、従業員の賃金や、利益には悲観的です。しかしこれでは持続性がありません。従業員の生活が上手くいかないと、企業も繁栄しないのです“と、この論文を発表したリブキン教授はいいます。

先週発表になったFRBの消費者の財政に関する調査によると、この3年間で平均的なアメリカ人の家庭の給料は4%あがったといいますが、その増加分はほとんど、高所得者にまわっているそうです。一方、典型的な家族の所得は5%減っているのです。($49,000 から$46,700へ)

しかしこの論文の共同著者であるポーター教授によると、賃金をあげることはそんなに簡単ではないといいます、なぜなら外国で製品を作る事はアメリカで生産するよりは安く、アメリカの労働者の生産性はこの数十年であがっていても他の国ではもっとあがっているからだといいます。

そこで教育(小学校から高校まで)を強化することや、ジョブトレーニングは生産性をあげて賃金をあげることにつながると教授はいうのです。

また、政府の政策、税法と、政治が悪いことが、他の国よりも競争力がおとる理由になっているとも考えています。

日本では逆に、起業した方が大変、というイメージがあり、サラリーマンでいるほうが生活が安定すると、思っている人がまだまだ多いとは思いますが、日本的経営が崩れ、近年のブラック企業の出現により、日本もそんなのんきなことはいってられなくなってきたような気がしますね。会社の競争力は個人の競争力の上に成り立っていると考えると、教育の継続性を痛感します。昔、スイスで失業していた時に、失業者向けにうけたコースで “教育はずっと続けないといけませんよ ”といわれたのを思いだしました。

高校生向けのedXがスタート!

edX が高校生の為のカリキュラム(26科目ほど)を来月から始めます。

数学やサイエンス、コンピューターサイエンスのイントロダクション的な授業とAP(Advanced Placement Class)テスト対策のコースがメインのようですね。

コースの提供は19の大学や高校から行われるそうですが、こうなった背景には、大学に入学したものの、基礎理解ができていないことで授業についていけない人達がかなりの数いる(例えば大学で行われる物理の授業には高等数学の知識が必要なのに、それが足りない為についていけない)一方、できる学生達はどんどん、高校生でも上級のクラス、例えば大学の単位として認められるAPクラス(テスト)をとったり大学の授業を一部受講したりしている子達がいるという現実があります。学校によってAPクラスがそれほどないところもあるのでedXでAPクラスをとってテスト対策にするということも可能でしょう。実際、高校生くらいになると、例えば数学ができる子、できない子(得意な子、不得意な子)の差はかなり大きくなり、15歳くらいからハーバードの通信クラスをとっている子供達もいるくらいですから、得意なことはどんどんのばそう、というアメリカの考え方からは自然な流れだと言えます。また、先生が授業の一環にこのコースのマテリアルを使うこともありえます。
edXでは現在、300万人もの高校生の年代の学生が登録をしているそうです。

また、数ある大学の中から自分にあった大学をどうみつけ、どうやって大学に申し込みをするのか、大学側の条件や、ファイナンシャルエイドについて教えてくれるコースもあります。今回提供されているコースは高校から大学に行くギャップを埋めるコースと言えるかもしれません。

幸福になる条件

「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY  に関しては去年のブログでも紹介したのですが、この1年に何度となく”幸福学” について耳にしました。この幸福学を大学で学ぶ人もまわりにでてきましたが、哲学的なことや心理学的なことでも学ぶのでしょうか?物質でみたされていても心が満たされない人が多いからなのか、幸福の本質はなんなのか、ということを、改めて問う人がふえているのでしょう。

幸福の定義って人の価値観によって結構違うと思われるのですが、アメリカの場合、幸福=成功=金 という構図が頭をよぎります。
日本の場合、そこに”年齢”という条件がつくようです。

内閣府がまとめた「国民生活選好度調査」(2008年)によると、アメリカを含め、諸外国では年齢と幸福度というのはUの字を描く(若い時と、高年期で高くなる)のに、日本の場合、年をとるほど幸福度が下がるといいます。

ちなみに自分は何かに対して不安や恐怖心がある時、幸福ではないと感じます。これは金銭問題、健康問題、人間関係でも、何でもいいのですが先に対する不安、恐怖心、これが不幸のもとかな、と。で、実は不安を除ければ、残るのは特別な出来事ではなく、いわゆる平凡な日々なのですが、今あることに感謝できる事が幸せなのかなと。何かが不足しているという不安を取り除くために、色んな要素を足していくという考え方より、今あることにフォーカスをしたほうが、今に感謝でき、いつも何かに感謝できる人は幸せだと私は思います。

先日、たまたまイベントで隣に座ったハーバードで教えている医師の方が ”今、幸福論について本を書いているんだよね”、といいます。
”幸せな人達みんなに共通する要素を調べてそれについて書いているんだ。幸福な人の条件には4つあるんだよ、何だと思う?”

”それはね、いい友人をもつこと、他の人の為に何かをすること、そして。。。。”
さてこのあと2つの条件がくるのですが、みなさんだったら何を考えるでしょうか。

ちなみに、このあとの2つの条件にはお金に関することは含まれません。
そこでお金についてはどう思うのかをきくと、

”お金があるから幸福なんではなく、幸福な人のところにお金がくるのさ”
とのこと。

さて、彼の本は早くてこの冬、遅くても来春くらいには出版されそうです。
出版されたら続きを紹介しますね〜

関連記事:
お金で幸福が買えるらしいことが判明「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY

アメリカにくる外国人留学生の動向

ブルッキングス研究所が、2001年から2012年の間にアメリカに来た、外国人留学生の動向について発表しています。

• 2001年から2012年までに外国人留学生はほぼ5倍になった。(110,000人から 524,000人)
• 留学生は都市部に集中している(ニューヨーク、ロサンジェルス、ボストン)
• 学生の出身地は新興国の特に発展が著しい都市(トップ5はソウル、北京、上海、ハイデラバード、リヤド)
 *これが国になると、中国、サウジアラビア、インド、台湾、イラン
• 留学生の3分の2はSTEM分野(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、数学)と経済、経営、マーケティングについて勉強している
• 留学生のうち45%が卒業後もそのエリアに残る

マサチューセッツ州には114の高等教育機関があるとされていますが、その中でボストンエリアをみてみると、2008年から2012年までの間、留学生は18億ドル学費に支払い、9.3億ドルほどを家賃などの生活費として支払っています。
この10年間の全米での留学生数の伸びをみても、高等教育が確実に一大産業になっているのがわかります。学生が増えることで、大学の抱えるスタッフも増えていくことになり、労働省の調べによると2013年には約9万人がボストン周辺の大学で働いているそうです。

ボストンエリアで学位をとるために留学しているのは約53500人ですが、そのうち40%は学士号取得の為に、48%は修士、12%が博士号を取得するためにきています。そしてこの数字はアメリカの他の地域の平均の3倍にものぼるそうです。

ちなみに、一番、外国人を受け入れているのはノースイースタン大学(9279人)、ボストン大学(8413人)そしてハーバード大学(7112人)
人気の学部はビジネス、マネージメント、マーケティング、エンジニアリング、ソーシャルサイエンスの順になっています。(STEM分野は27%)

マサチューセッツ州では卒業しても地域に残って、就労してもらうほうが地域経済にとってプラスになるという考えから優秀な人材に残ってもらうために、就労ビザの緩和を目指しています。

大学のお金を運営するファンドマネージャーに支払う報酬はどのくらい?

ハーバード大学のファンドは300億ドル以上ありますが、この巨大なファンドの運営をしているのはハーバード大学の完全持株子会社として1974年に設立されたハーバード マネージメントカンパニーです。8月28日のボストングローブによると、1969年度の卒業生達が、この会社のファンドマネージャー達に対する報酬が高すぎるというクレームを学長あてに書いたとの記事がありました。

世界で一番大きな大学ファンドを管理するマネージャーのうち報酬の高い順に5人の報酬額を合わせると、2009年には2520万ドル(1ドル104円で換算すると26億円程度,
一人あたり、5〜6億円程度)だったのに、2013年には2880万ドルになりました。その間2011年には財政危機の影響をうけて1800万ドルになっています。
これに対し、ハーバードの同窓生達はファンドマネージャーに支払いすぎだといっています。サンフランシスコにあるCharles A. Skorina & Co.という投資運営会社によると実際、2008年からの5年間でみるとパフォーマンスは年率1.7%にしかなっていず、(しかし、2009年からの5年間だと、11〜12%になるとのこと)アイビーリーグのうちで一番パフォーマンスが悪いです。ちなみにコロンビア大学はアイビーリーグの中では一番運用率がよく6.8%だそうです。

金額という絶対数でみれば、高いと思いますが、割合でみると、どうなんでしょうか。最も、通常の銀行のように純粋に利益を追求する機関と違って大学のお金を預かるということで、寄付をした方からすれば、ファンドマネージャのためにそんなに使うのなら、学生の為に使ってほしいと願うのは当然ともいえますが。。。

どの5年間をとるかでもリターン率がずいぶん違うようですが、それでも去年のリターンは11.3%で(イエール大は12.5%)マサチューセッツのペンションファンドは12.7%、という数字をみると、日本の大学の状況とはずいぶん違うようです。

2010年の文部科学省の資料、によると、私立大学でもっとも組入れられている商品は預貯金(82.0%)であり、次いで国内公共債(66.2%)、以下元本リスクのない仕組債(51.1%)、国内民間債(39.6%)、元本リスクのある仕組債(25.9%)、公社債投資信託(18.7%)と続きます。ちなみに、例えば東京三菱UFJ銀行に大口定期で1年預けても0.025%しかつきません。日本の大学の金融資産ベースの運用利回りは1〜4%と、いうことを考えると、10%という数字は大きな数字に見えます。
日本の大学では自家運用が中心という特徴がありますが、ハーバードマネージメントカンパニーは外部のマネージメント会社、ヘッジファンドにも一部委託して運用を行うことで、逆にコストを減らしているとの事です。

ファンドを増やすためには、寄付金を増やすか、リターン率をあげるか、支出を減らすしかありません。この中で、”増やす” ということに関しては、アメリカから学べることが多そうです。

ハーバードは一度に得る寄付金の額も非常に多い事で有名ですが、去年1億2500万ドル寄付金を提供した(2009年にも1億2500万ドルを寄付)スイスの起業家Hansjorg Wyss氏の言葉を思い出しました。
彼いわく ”寄付や投資をする所をいつも探しているんだけどね、合理的にやれば、結局、財産はいつも増えてしまうんだよ”

参考記事:
ハーバード大学の資産運用