高級時計ウブロの会長が話す小国成功の秘訣

アルバート・ギャラティンというアメリカの第4代財務省長官(1801〜1804)がいますが、彼はジュネーブ(スイス)からの移民です。彼の功績をたたえたシンポジウムがハーバード大学でありジュネーブから高級時計ウブロのビバー会長がきてスピーチをしました。ビバー会長はルクセンブルグ生まれの65歳になりますが、ローザンヌ大学卒業後、スイスの時計産業を渡り歩いてきた人です。トレードマークのシングル5つボタンのスーツ(?)をきて、エネルギッシュにスピーチをしてくださいました。

スピーチの中で、どうして小国スイスが頑張ってこれているのかについて大きく3つの点をあげていました。

1教育
いかに職業訓練が大事な制度であるか。これはシステムでみなければいけないことで、産業と一体化して、産業が必要な人や技術を職業訓練を通じて育成することが必要。需要を把握しないで、一方的に教育をしただけでは社会に必要な人材は育成できない。

2健康
スイスはすばらしいメディカルシステムがある。人も長生き、製薬、医療も発達している。

3移民の活用
移民を社会の中で根ずかせて、教育し社会に適応させること。

1970年代には安価なクオーツ時計が現れて、日本製の時計の進出によりスイスやアメリカの時計産業は大打撃をうけました。アメリカの時計業界は壊滅状態になりましたが、その後、90年代にはスイスの時計業界はよみがえります。それは時計というものを、時を知るもの、として扱うのではなく、コミュニケーションツール、ステータスシンボルとして、販売したからだ、と彼はいいます。そして、自分たちは”スイス”を輸出してきたわけではなく、”スイスネス(スイスらしさ)” を輸出してきたんだと、スイスネスとは、品質であり、サービスであり、希少価値であるとのべていました。

彼はどれだけスイスはすばらしい国なのか、“スイス最高!”ということを話していましたが、(笑)とてもチャーミングなので私には嫌みがないように感じましたが、歯に衣着せぬものいいで、アメリカ人は教育を大事にしていないとの発言や、車産業を例にあげて市場の欲求にあった商品を売りこまない等、あのハーバードで直球発言してしたので、ちょっと周りのアメリカ人の反応をみてこっちがびくびくしてしまいました。。。

確かにアメリカ同様、スイスも移民社会であり、実際成功している実業家は移民が多いです。例えば、ネスレの創業者ネスレ氏はドイツ出身、スウォッチの創業者ハイエック氏はレバノン出身、近年アメリカズカップに2回優勝しているベルトレリ氏はイタリア、そしてこのスピーチをしたビバー会長もルクセンブルグ。でもどの人達にも共通しているのが、スイス人であること、スイスを誇りに思っている事です。

参考記事:
失業率を改善させる可能性のある職業訓練制度

ハーバードビジネススクールのオンラインコース

ここのところ、急激に浸透しているオンラインコースですが、ハーバードビジネススクールもとうとうオンラインコースに進出することになりました。(3月21日ボストングローブ)

といっても、無料のMOOCsではなく、有料のコース、しかも、ブランド力を落とさないために、ハーバード大学がMITと一緒に2年前に始めたedXには参加せず、独自のHBXというオンラインコースです。このコースは他の大学で学士を目指している学生の為のビジネスの基礎講座になります。参加できる生徒は、edXのように誰でもというわけでもなく、正式に申請しなければいけません。

実際オンラインコースは手軽さがありますが, コースをちゃんと最後まで終える人の割合は高くなくHBXでは真剣にコースに取り組みたい人のみの受け入れを考えています。
最初のコースは6月〜8月までで1500ドルかかり、初めてのコースはマサチューセッツ州にある大学の学生500〜1000人程度をうけいれ、3講座(財務会計、経営分析、マネージャーのための経済学)を提供します。全ての授業はハーバードビジネススクールで行われているように、ケーススタディです。成績評価をどうするかというのはまだ議論中らしいですが、評価のされかたも、他のオンラインのコースと違って相当厳しいものにはなるようです。通常の授業では学生はアトランダムに呼ばれて問題を解決する方法を聞かれたり、ケーススタディのサマリーをきかれたりしますが、オンラインではスクリーン上にボックスがあらわれ、聞かれた質問に数分で答えなければなりません。

このコースを終えれば、ハーバードビジネススクールで講座を終了した、という証明書がでてそれが履歴書に書けます。企業は100年もの間、ハーバードビジネススクールというブランドを信頼してきたので、その名前を使うには学校側も気を使うようです。

今回の取り組みがうまくいえば、マサチューセッツ州以外にも対象を広げ、コースのサイズや長さを変更していく予定で、将来的にはプロフェッショナルコースを視野にいれているそうです。

関連記事:
MOOCs(大規模公開オンライン講座)の edX が一年を迎えて
MOOCsは役に立つのか?
MOOCs(大規模公開オンライン講座)受講後の転職・就職成功率

ハーバード大学の資産運用

ハーバード大学は寄付金が多く、リッチな大学としても有名ですが、この豊富な寄付金を運用しているハーバードマネージメントカンパニーという会社があります。この会社の目的はハーバード大学が行う教育と研究を金銭的に長期サポートすることにあります。このファンドのプライベートエクイティマネージャーが変わるというニュースがありました。米国内最大の大学基金のマネージャーになるリチャード•ハル氏(46歳)はテキサスペンションファンドで140億ドルのプライベートエクイティの運営をしていた人です。(ボストングローブ3月17日)未公開株をポートフォーリオにこれからも重点的にいれていこうという方向で、これからはグローバルな未公開株も取入れていきたいとのことです。

ハーバードの寄付ファンドは去年の6月の時点で総資産327億ドルですが、そのうち50億ドルはプライベートエクイティやファンドにあてられているそうです。
大学の資産運用というと、2009年の駒澤大学の巨額損失事件以降ますます日本では手堅く、ロスを少なくするというイメージがありますが、アメリカでもハーバードの積極運営は、他の大学の資産運用にも影響を与えてきています。

大学の資産を考えた時に、資金運用という面もありますが、資金調達という側面もあります。
アメリカの私立大学は寄付集めのための、イベントも多いですが、ハーバードの場合は卒業生の寄付金が特にすごいですね、高額寄付受付のホットラインがあり、”私の所にかかってくる電話は全て、10億ドル以上の寄付の話です”といっていた人がいましたね。。。小さな国の国家予算なみです。そして、資金を提供する側も、喜んで高額を払ってくれます。それは、自分が母校に対して愛着や自信があるということがひとつと、高額を出す人にはやはり、投資という考え方があるようです。結果を出してくれることを望んで学生や研究、もしくは施設に投資をするのです。
特に、卒業生や団体から寄付をもらう場合、卒業生が、あの大学に通ってよかった、又、自分の子供も是非入れたいと思える環境作り、というのはとても重要になってくるようです。

人気のマーケットプレイスは作るのが難しいという話

メディアの世界では、近年沢山の情報が流通するメディアプラットフォームを作ったものが勝ち組になるといわれていますが、物品、サービスの世界ではマーケットプレイスをつくることがはやっているという話が3月16日のボストングローブにありました。

供給側と需要側を上手く結びつける市場で近年うまくいっている会社の中にはeBay, Uber, Etsyがあります。
2010年にマスチャレンジで、5万ドルの賞金をもらって現在までに、65万ドルの資金を調達した、レンタビリティーズというシザーリフトからダンスフロアまでなんでもレンタルするオンラインのマーケットプレイス会社が昨年の秋に、会社を清算するという決断をしたということがのっていました。

彼らに成功するマーケットプレイスを作る為に何が難しかったのかきいてみると、“何もかも”というこたえがかえってきます。

投資家からみると、マーケットプレイスを作るのは時間がかかるし、需要サイドと供給サイドが一緒に成長するように気をつけないといけないのが非常に難しいと分析しています。
それでも、マーケットプレイスを作る傾向はますます加速しているようです。

最近での成功例はこの1月にIPOしたベービーシッターやペットシッター、老人ケアを必要とする人、その仕事を提供できる人の為のマーケットプレイス Care.com です。去年は8200万ドルの収益がありました。
この他に、プライベートのコーチとアマチュアスポーツプレイヤーを結びつけるサイトCoachUp  
この会社は1000万ドルを調達しましたが、彼らにとって難しいことはコーチをみつけることではなく、プライベートコーチとは何か、ということと、スポーツをする子供達や親たちにプライベートコーチをつける利点を認知してもらうことなのだそうです。日本でも以前、逆上がりができない子供や学校の体育のテストのために、プライベートコーチをつけて練習した、という話をきいたことがありますが、程度の差はあれ、スポーツコーチの需要はあるようですね。(目的はそれぞれ違うようですが。。。)

今週スタートするのはSoonSpoon (高級)レストランの予約キャンセル分をラストミニッツで提供するサイトです。

またマーケットプレイスの中にはチャリティーに寄付するものもあります。
Canaryでは不要になった家具、電化製品、家財を売ると、60%は売り主が、12%はCanaryのパートナーのノンプロフィットにいきます。

マーケットプレイスを作る難しさは、認知度をあげて、ある程度流通量が増えるまで、資金が必要であり、労働集約的なビジネスであるという点だそうです。
しかし、一度マーケットプレイスで、沢山の取引がいい値段でされるようになると、競争相手がいなくなります。それがE’bayの価値が750億ドルになった理由だとの分析があります。

都市開発にも影響を与えるインキュベーターのあり方

スタートアップを中心に様々な分野の企業や団体にオフィススペースを貸してケンブリッジのエコシステムを作っているCIC(ケンブリッジイノベーションセンター)が新しく隣の市であるボストンにCIC ボストンを4月にオープンするということを発表しました。CICは1999年に、MITのあるケンブリッジ市にオープンして以来、主に大学から派生した企業に場所を提供しつつ、起業家同士を横でつなげる役目もして、発展しています。現在は700社以上が入居しておりそのうち500社程度がスタートアップですがフェイスブックやアマゾンのような大企業もひきつけています。今度できるボストン市のオフィススペースには300企業、1200人ほど入居できるスペースがあるそうです。

CICケンブリッジがあるケンドールスクエアから新しくできるCICボストンまでは、3kmもない程度の距離なのですが、1999年にCICができてから、ボストン市内にかけて色々な種類の小規模なインキュベーターもうまれています。ケンブリッジ市というのは、ハーバードとMITの施設が大半を占めるのではないかというくらい、学校関連施設で埋め尽くされているエリアですが、チャールズリバーを渡り、隣の市ボストンのほうにいくと金融街、弁護士事務所、投資家のエリアになります。近年、ボストンエリアにもPayPal やIsobar のようなデジタル系の会社が進出し始めました。
イメージ的には新宿から原宿までの間に1000以上のスタートアップがあるという感じになるでしょうか。ちなみにケンブリッジ市のサイズは18.47㎢、大体新宿区と同じサイズ(18.23㎢)になります。ケンブリッジ市の 人口107881人(2008年)に対して、新宿区はその約3倍(312418人)、そう考えると、相当な数のスタートアップがあることがわかります。

うまれたばかりの会社にとっては賃料が安いだけでは価値がなく、その他の付加価値、例えばキッチンだったり、会議室だったり、WiFi、オフィス家具が無償で提供されることは、余計な出費を控える効果があります。ちなみにケンブリッジのオフィスのほうでは月に1人、350ドル〜かかり、長期契約ではなく、30日前に告知すれば、退出できます。賃料を低くおさえる為に、なるべく大規模な展開をしようとしているCICですが、大規模にすることで、周辺地域への波及効果も高く、周辺エリアの経済を活性化させたり、さらに他の企業をよびよせることになります。

ボストン市は、この起業家を育てるエコシステムがケンブリッジ市にもたらしたような効果をボストン市にももたらす事を望んでいます。今年新しく市長になったウォルシュ氏はこの動きが雇用をもたらし、町のイノベーション経済を成長させると思っています。CICボストンの進出でボストンエリアのテクノロジー産業の進出はますます増えることになりそうです。

参考記事:
スタートアップを支援する様々なオフィススペース