国も応援する、2015マスチャレンジ賞

さて、今年のマスチャレンジアワードは、政治色が若干強いものになりました。
マサチューセッツ州のベイカー知事に、ボストンのウォルシュ市長、来年はイスラエル、メキシコでマスチャレンジがオープンするので、各国の代表者、特にメキシコは国をあげてイノベーションエコノミーを後押ししています。どこの国でもイノベーションを牽引する産業はウェルカムという感じでしょうか。

2010年に始まったマスチャンレジのアクセラレータプログラムで現在までに835のスタートアップが6500以上雇用を生み出し、11億ドル(8億円ほど)資金調達をしました。今年は2250社の申し込みが世界60カ国からありました。他のアクセラレータープログラムやインキュベーターとちがってマスチャレンジはノンプロフィットです。スタートアップの株式を要求したり、他の金銭的な支払いというのが生じないところもスタートアップにとってはとてもいい環境でありますし、他の利害関係者にとって、ニュートラルな立場でいられます。

今年で6年目になりますが、増え続けるのは参加社だけではなくこのアクセラレータープログラムの授賞式をみる人たちで、今年は1700人、しかも席もキャンセル待ちでした。ファイナリストとしては26社が選ばれ、壇上でピッチをするわけですが、ここに残った26社はどれもこれから成功する確率が大変高いと言われています。そういった意味でも、投資家にとっても非常におもしろいこの賞(ショー?)であります。その中で16社がこの日総額1.3億円程度の資金を手にしたわけですが、まあ少ないという人もいますがあくまでも、返す必要のないお金をこれだけもらえるというのはいいですよね。。

賞が発表される前に円板型のピアノで演奏するブロキット・パーソンズ氏

賞が発表される前に円板型のピアノで演奏するブロキット・パーソンズ氏

ショー的要素が強い受賞式ですが、毎年世界をかえる豊富なアイデアの数々には圧倒されます。
ファンタジーフットボール(ソーシャルゲーム)のDraft King は2015年にすでに10億ドルを集めていますし、おなじみの電気ショックで悪習慣を直す、Pavlok 虫をチップスにした SIX FOODS  と様々な分野から選ばれていましたが、その中でも若干バイオ関連がやはり多かったかな?との感じもうけました。

電気ショックで悪習慣を治すパブロック、腕時計タイプ。

電気ショックで悪習慣を治すパブロック、腕時計タイプ。


個人的に面白いと思ったのは骨をくっつけるノリを開発したLaunchPad Medical骨を接着するのは非常に難しいということで、長く続く痛みを抱える患者をみていた医師が患者の負担を減らすために始めた会社です。これを使用することで、数分で骨がつき、痛みからも早く解放されるというものですが、バイオ関連の専門家の目からみても非常に有望な会社のようです。

ボストン市が考えるイノベーションエコノミーを牽引する為の市の役割

アメリカ経済を前にすすめているもの、それはゼロから何かを作り出すダイナミクスですが、これは企業、大学、個人ベースだけでなく、それを支える市や州も大切な役割を果たすべく今年で2年目に入るボストンのウォルシュ市長は、去年から、起業家、ベンチャーキャピタリスト、教育関係者達に、ボストンがニューヨークやサンフランシスコとどう差別化を図りイノベーションエコノミーを牽引していくのかということについてヒアリングを行ってきました。シリコンバレーに比べ、ボストンのほうが、人も企業、社会も協力的で、”協働”というイメージを持つ人々も多いです。

ボストン市内にのみならず、周辺地域のスタートアップ、イノベーションエコノミーも一緒に促進するために、市はStartHubを立ち上げることなりました。ボストン市内に限らず、周辺地域のスタートアップのプロモーション、ネットワーキングイベント等を開催していく予定です。
個人的にもアメリカは自由な国というイメージがあったのに、意外に規制が多いということは感じます。現地の人達は、9.11のあとに特に厳しくなったといいますが、ビザの問題を初めとして、食品に関する規制や販売に関する規制など様々な市や州が許可をださないとできないビジネスの分野というのも多くあります。特に、スタートアップの分野ではそういった法規制のグレーゾーンでビジネスをやろうとしている場合、明らかに許可が必要な場合、どこに相談したらいいのか、誰がキーパーソンなのか、わからないことが多いということで市としては、そういったスタートアップが成長するのを助けるために特に市が許可を与えなくてはならないような分野を重点的に(そうでないものも含め)メンターを紹介したりすることに力をいれると発表しました。

市のほうからの働きかけで、イノベーションエコノミーを牽引するためにできることを積極的に考えていくという姿勢はアメリカ的なんでしょうかね?日本の公的機関の方と以前話した時に、日本の場合、民間が先にいっていていて、それを公的な機関が追いかける形になることがほとんどだといっていましたが。顧客目線、この場合はお客さんはスタートアップということですが、で自分達の役割を考えるということは公的機関にも是非とりいれてほしい部分ではないでしょうか。

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日本でもイノベーションを起こすための取り組みが色々検討されていますが、ケンブリッジ・ボストンエリアでなぜ、イノベーションエコノミーが成功しているのかということを簡単に説明したいと思います。

一つとても大事な点はイノベーションを起こし、成功する起業をするということがまるで、その会社一つ、もしくは偉大な起業家一人を育てるというように思われている部分があるのですが、地域として成功するためには、エコシステムとして成り立たないと、継続して繁栄していきません。

ここでいうエコシステムとは循環する、という意味ですが、このシステムが地理的にも非常に集約されていることに大きな意味があります。

ケンブリッジ市の例でみると、まず
1 大学が集中している
ハーバード、MITといった世界でも最高峰の大学やその研究所を中心にケンブリッジ市、及びボストン周辺には多数の大学が集まっており、日々新しいテクノロジーやアイデアが生み出されます。

2 ベンチャーキャピタル
エンジェルと呼ばれる個人投資家や、ベンチャーキャピタリストが大学からスピンオフしたスタートアップを支えています。

3 インキュベータ
CIC(ケンブリッジイノベーションセンタ−)のようにメンターやベンチャーキャピタルも出入りするような起業家達のコミュニティーを作っているワーキングスペースが数多くあります。

大学で生まれた新しいテクノロジーやスタートアップはベンチャーキャピタルからの資金提供やメンターの助けを得て、コワーキングスペースのような場所(インキュベータ)で育っていきます。そこは、起業家達が集まるコミュニティであり、互いに情報交換したり、メンターからの支援を受けたりすることができます。そして、大きくなった企業はさらに、別の場所に移るもしくは、大企業に売却されて、多額の資金を得た起業家達は今度はメンターや投資家として新たな起業家を育てたり、またシリアルアントレプレナーとして、次の事業を立ち上げたりしていくのです。そしてそれがMITを中心にして半径2〜3km程度の範囲のところで行われています。場所が集積するのがいい理由というのは人の流れが密になり、人がコミュニティに帰属する意識も上がるからです。コミュニケーション量も増えることでそこからまた新たなものが生まれる可能性が高くなります。

そして、上の表の3つの要素の中でさらに細分化が進んでいます。例えば、インキュベータ一つとっても、ラブセントラルのように、バイオテックの為のインキュベータや食関連のインキュベータ、またマスチャレンジのように、一つの施設の中に、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、メンターを組み込んだスタートアップをより、積極的に育てるようなアクセラレータと、それぞれがさらに細かく枝分かれしているのです。
大学の中にも各大学がアントレプレナーセンターを構え、メンターの紹介、ベンチャーキャピタルへのつながりと、学生起業を支援しているところも多くあります。

マサチューセッツの州知事は、来年から変わります。新しい州知事の課題は、成功したケンブリッジのような、イノベーションエコノミーの集積地をマサチューセッツ州内の他のエリアでも作ることを支援できるのかということになります。

日本の場合、必ずしもこのパターンではないとしても、成功するイノベーションエコノミーを作れるかは資金を作り次に投資する、という資金の流れと人を育て、育った人が次の世代を育てるというエコシステムが、あるまとまった地域で作れるか否かではないかと思います。

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