ティーンエージャーの作るアプリは世界を変えられる?

タフツ大学の電気電子工学部のパネッタ学部長と、IEEE(電気・電子分野における世界最大の学会)が13歳以上の学生を対象にヘルスケア、教育、クリーンエネルギーといった分野の世界の問題を解決するアプリを開発するコンテストを開催することになりました。目的は携帯を使って世界の低所得層者を援助することです。(3月8日ボストングローブ)

先日のハルトプライズ でも提案されていましたが, どんなに貧しい所でも、携帯電話は普及しています。水を得るのが難しくても、携帯はあるというのが現実なようで、電気やガスが通る前にインターネットが通じる可能性という事を考えると、アプリで問題を解決するというのは十分あり得る話です。パネッタさんはクリントン元大統領がスピーチでモバイルのアプリが2010年のハイチの地震での救助やその後の復旧に役立ったというのをきいてこのアイデアを思いつきました。

このコンテストには18歳以上の人も参加できます。18歳以上なら実際のソフトを作る必要がありますが、13〜17歳の子供達はアプリを作る必要はありません。彼らはそれがどのように機能するのかというアイデアとスケッチがあれば参加できます。賞として、iPadエアーがもらえたり、IEEEのエンジニアがそのアプリを実際に作るのを手伝ってくれたりします。

アプリコンテストはIEEEが発展途上国での国際プロジェクトを援助するためにクリントングローバルイニシアティブの協力をえてたちあげたApp-E-Feat(アップイーフィート)というサービスに注目してもらう為に、そして又、ソフトウエアのエンジニアを育てる為にデザインされたものです。パネッタ学部長は発展途上国やアメリカ国内でも広く問題を解決する為にモバイルのテクノロジーは使えると思っています。IEEEには40万人のエンジニアがおり、2月の中旬には500人のボランティアが集まりました。

コンテストに、現状興味をもっているのは女の子が多いそうです。
子供たちは人間関係や環境を意識しています。
友人関係を良好に保てるように、関係が悪くなりそうなら警告サインをだしてくれるアプリや、環境問題も人気のあるテーマです。例えばグーグルマップ上で清掃されるべき場所が示されるアプリとかに注目が集まっているようです。

App-E-Featコンテストは5月19日が締め切りで6月20日に受賞者が発表されるとのことです。

電気工学の分野では女性は圧倒的に少ないのですが、女性の学部長が先頭にたつことで、女の子達も敷居が高くなく参加できるのかもしれません。
確かに子供の視点って、余計な邪心がないので事の本質をついていたりします。子供心のある、単純にこんなのあったらいいな、っていうものが世界をよりよいものに変えていく可能性は十分にあると思います。いいアイデアとソフトウエアを作る能力があれば、中学生でも世界をかえることができるということを感じられる取り組みは子供に夢を与えることになりそうです。

賞金100万ドルをかけたHult Prize、 チューインガムがスラムの健康を守る!

賞金100万ドルをかけた第5回のHult Prize(ハルトプライズ)の地域代表を決める選考会が3月8日、にボストンのサイエンスミュージアムで行われました。

Hult Prizeというのはハルトビジネススクール 主催で行われ, 世界の問題を解決する為に優れたアイデアを提案する社会起業家を目指す人達に贈られる賞です。ハルトビジネススクールがある、ボストン、サンフランシスコ、ロンドン、ドバイ、上海で、このコンテストは同時開催されます。それぞれの地域から代表1チームを選び、7月、8月にハルトビジネススクールで行われる6週間の特別コースで、トレー二ングをつみ 9月の クリントングローバルイニシアティブで、最終プレゼンをして、最優秀のグループが世界の貧困問題を解決する為に、賞金100万ドルを手にします。

この賞は、世界の貧困問題、環境問題、教育・自然災害への救済などに関して、問題解決を探る、ビル•クリントン氏の呼びかけで始まったクリントングローバルイニシアティブと連携しており、クリントングローバルイニシアティブから提案された今年のテーマは、2019年までにスラムに住む2500万人の人達を慢性疾患(循環器系の病、癌、糖尿病等)から守る為に何ができるのか、ということでした。この背景には世界中で2億5千万人のスラムに住む住民が慢性疾患に苦しんでおり、現在行われている方法では問題が解決できていないそうで、世界中での社会的、経済的費用は2030年までに47兆ドルにもなってしまうとの試算があるということがあります。

今年で5年目になるこのハルトプライズですが、150カ国から10800人が参加して、この問題を解決するアイデアを提案しました。

ボストンでは事前に44チームほどがビジネスプランを提出し、その中から4チームが選ばれて最終のプレゼントをしました。

去年はスラムにどうやって食料を供給するのか、ということがテーマでした。ちょうど1年前このイベントでプレゼンをし、最終的に100万ドルを手にしたカナダ、マギル大学のチームでスラムに食を供給する為に、コオロギを粉末にして、食料にするということを提案したグループの代表がスピーチをしました。
”1年前ここに立った時は、これで1億円がもらえるかもしれないんだ、すごい、と思っていたけど、1年たってみて、ソーシャルアントレプレナーシップっていうのは本当に、自分たちの為にお金を稼ぐのではなく、人の為に働くことなんだってことがわかりました。”と言っていたことが印象に残りましたね。

今年は、ジャッジによると、モバイルを使って解決策を提案するものが多かったそうです。スラムといっても、食料がなくてもモバイル普及率というのはかなり高くて、地域によっては90%以上もあるそうです(一日の給与が2ドル以下なのに、モバイルはあるというのはなんだか不思議な現実だと思いましたが。)

4つのチームが選ばれてプレゼンをしました。
衛生面をよくする為に、まずトイレとシャワーを供給し、それを起点に医療とつなげるという提案をした医者のグループや、モバイルを使って、ただで診療がうけられるようにすることを提案するグループ等がありましたが、最終的に選ばれたのは、一番シンプルなアイデアを披露したグループでした。

彼らは”健康”といってもそのなかで虫歯に焦点をあて、虫歯を防ぐことで、健康を維持するというアイデアを披露しました。
病気になった人を助けるというアプローチではなく、病気になることを防ぐというアプローチです。
スラムではそもそも、歯磨きをするという習慣がないという現実があります。生活習慣を変えるのは難しいとしても、ガムをかむなら、みんないやがらずにしてくれるということで、それなら、歯磨きガムを配って歯を磨くかわりにしてもらおうと考えたそうです。
そして、ガム自体は簡単に作れるので、現地の工場と協力し、その地域にガムを作るという産業を作り、また地域の女性達にセールスウーマンとして仕事を提供しながら、広めていくという考えでした。

貧困層の問題を解決するときに、近代的なビルの中でアイデアをねっても実現可能性のあるアイデアはでにくいものです。そもそも、都会にあるような基本的なインフラさえないところなのですから。そこで、1年間貧困地でボランティア活動をしたとか、NGOで働いた経験がある学生達、又その地域の生活をよく知っている若者達が、本当の問題点や実現可能な解決策をねっていきます。

プレゼンをする人たちも、様々な分野の学生やMBAの学生達、医者、実際にスタートアップをやっている会社経営者から、社会起業家まで、様々な人が参加するこのコンペティション。
多数の人がみて、ジャッジをするプレゼンテーションの場合、ビジネスの中身はともかく、話し方、ユーモア、そしてプレゼンする人が人にすかれるタイプの人なのか、というのは意外に比重が大きいと思いました。

まだニューヨークで行われる本戦までに時間があるので、細かい部分は調整されていくと思いますが、難しいことではなく、誰にでもわかる、簡単なプロセスなものが一番受け入れ易いというのは、去年のプレゼンの時も感じたことです。そして、それは営利事業でも非営利事業でも同じではないでしょうか。

社会起業家を目指す方々、是非こちらにどうぞ。
http://www.hultprize.org/en/

惜しくも賞を逃しましたが、医者の提案する解決策もありました。

惜しくも賞を逃しましたが、医療関係者の提案する解決策もありました。

地域代表として選ばれたチーム

地域代表として選ばれたチーム

ハーバード大学卒業記念講演、今年のスピーカー決定

今年のハーバード大学卒業式の記念講演は前ニューヨーク市長のブルームバーグ氏がスピーチを行うことにきまりました。

歴代スピーチをしてきた人々は、米国人に限らず、政治、経済、司法、国際社会、文芸、文化といった様々な分野で社会に貢献してきた人達であり、一般的にも知られている名前でいえば、ビルゲイツ, JK ローリング、去年はオプラ・ウィンフリーと、豪華メンバーです。今年、スピーチがきまったマイク•ブルームバーグ氏はボストン出身でジョンズ・ホプキンス大学電気工学科を卒業し、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAをとったハーバードの卒業生なので、まだスピーチしていなかったことが意外な感じです。

彼は証券会社大手のソロモン・ブラザーズに勤務し、パートナーにまでなりますが、その後退社、通信会社ブルームバーグを立ち上げて、金融情報端末の販売をして財産を築きます。その後、ニューヨーク同時テロ後の2002年から2013年末までニューヨーク市長を勤めました。フォーブス誌による2013年世界長者番付では13位にランクされている資産家です。

ハーバード大学を卒業するような学生達はどちらかといえば、人生で今までに大きな失敗や挫折はしてこなかったかもしれません。賢く、また一生懸命頑張ることができる人達であり、そして、卒業後も自分を叱咤激励して、前をみて進んでいける人達でしょう。
しかし、私が個人的に好きだったのはそういう学生達を前にした、JKローリングのスピーチ(2008年)で、彼女は、経済的にも底辺の生活を知っているだけに、言葉に深みがあるように思えました。

私が彼女のスピーチで特に好きなのは
”私が恐れていたのは、貧困ではなく、失敗でありましたが、でも失敗したことにより、(仕事もなく、シングルマザーになり、ホームレスぎりぎりの生活)自由になることができました。失敗は不必要なものをはぎ取ります。自分以外の何かであることをやめ、自分にとって重要な仕事を成し遂げることに全てを集中しました。”
という部分です。

エリート卒業生達にとっては、立ち位置がすでに凡人からみたら違うので、普通の人には失敗でないレベルも失敗の範疇になるかもしれませんが、大小問わず失敗をしない人生はあり得ないわけで、失敗を恐れて及び腰になっていきる人生は始めから失敗だと、彼女は言っています。

さて、ブルーンバーグ氏は、エンジニアで, 経済界に君臨し、そして政治家と、いくつもの分野を股にかけて活躍してきました。できることが一つではなく、色々な
才能をもっている彼が、どのようなスピーチをしてくれるのか、楽しみです。

髪の毛を切って、ファンドレイジングをしよう

ボストン市近郊にある、グラニットテレコミュニケーションズという会社が、社員の髪の毛を切る事で220万ドル(2億円強!)の資金を集め、ダナファーバー癌研究所に寄付をしたという話がありました。(ボストングローブ 3月4日)
ダナファーバーがん研究所はボストンにあり、アメリカ国立癌研究所指定癌センターの一つで国際的にも有名な施設です。

グラニットテレコミュニケーションズという会社には1200人以上の従業員がいますが、そのうち約430人の従業員が髪をきり、それぞれが、支払った金額がダナファーバー癌研究所に寄付されました。5000ドル払った人もいたそうで、癌で苦しむ人たちが周りにいる人ほど、寄付金もあがる傾向にあったようです。

4月にはボストンマラソンが開催されますが、(以前の記事にも書きましたが)、ダナファーバーはボストンマラソンでもファンドレイジングイベントを行っています。ボストンマラソンを走ることで、お金を集めるのです。自分の身の回りに癌で苦しんでいる人がいるけれど、自分には何もできない、という気持ちがある人は、そばに癌研究の為に資金を集めて走ってくれる人がいると、そのことに感謝して、お金をだします。そうやって、色々な人々の気持ちを集め一人一人のランナーが、100万円ずつ集めると400人走れば、4億円の資金になるのです。

ファンドレイジングが成功するには、ストーリーやコンセプトに共感できるか、という点や、自分が寄付することで社会の問題を解決することに役立つのか、という点が大事だと思います。

参考記事:
ボストンマラソンを走って社会起業家になろう その1

ボストンマラソンを走って社会起業家になろう その2

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政治活動のためのインキュベータ

ボストンにはビジネスを、加速させるための仕組みとして様々な種類のインキュベータ(新事業支援施設)があります。インキュベータというと、普通はテック系の共有オフィスを思い浮かべますが、共有キッチンや共有ラボまで実は色々の種類のものがあります。
そして今度は政治的なインキュベータの話です。(ボストングローブ3月3日)

Blue Lab.というスペースは(まだ1部屋)、政治のキャンペーンのために、まるでテック系のインキュベータのように候補者達が場所と資源を共有することで、コストをカットし、効率をはかることを目的にできました。背景にあるのは、政治のキャンペーンというのが、昔から変わっていないということで、現在のテクノロジーやSNSをもっととりいれて、変えていこうとの考えからだそうです。

まだはじめて10ヶ月しかたっていないこのビジネスは民主党の活動家でありエドワードケネディの広報秘書官だったスコット • ファーソン、キャンペーンマネージメント会社をやっているショーン • シンクレア、上院多数党院内総務のキャンペーンマネージャだったハリーライドによって立ち上げられました。
Blue Lab.は民主党の選挙キャンペーンのコンサルタントがチームになって、選挙戦を支えるというしくみですが、個別にコンサルタントと契約するのではなく、パッケージにすることによってより効率よく、コストも減らせるというしくみになるようです。
費用にはパンフレットやビデオ撮影、色々調べる事を手伝う学生の費用、もし候補者が自分の事務所がなければ、Liberty Square (ファーソン氏の会社)のオフィスを使って、ミーティングができます。
政治キャンペーンの為のインキュベータをニュージャージに作ろうという計画もでているそうです。

インキュベータという考え方が様々な分野で広がりつつあります。コストの意味でも節約できますが、情報を共有したり、孤独感がないということも大きな利点であるようです。
もっとも、秘密が多い業界にはむかないかもしれませんが。