起業を教えるネットワーク

子供のころ、将来何になりたい?ときかれて、”ピアノの先生”とか、“パイロット”とか、“警察官”、とか考えてみると、ちゃんとした職業名をみんないっていて、そこで “サラリーマン” とかいう友達はあんまり、いなかったような気がします。それが歳を重ね、現実が見えてきて、とりあえず、大企業にいこうとか、商社ならいいとか、形というか枠を気にし始めると、一気に夢がさめてしまいます。 1月16日のボストングローブ紙には中高生にどうやってビジネスをするかということを教えるプログラムを提供する、ノンプロフィット団体、”起業を教えるネットワーク”(Network for Teaching Entrepreneurship programs)が紹介されていました。

ニューヨークシティを中心に活動するこの団体のプログラムは収入の低い家庭が沢山いる学校を対象に、子供達が将来のビジネスを思い描けるように学校のカリキュラムに組み込まれています。
プログラムでは、子供達に消費者になることだけではなく、仕事を作る側になれることを教えます。

17歳のKellamさんは(女子)、肉体的にも精神的にも障害を抱える子供の為のダンススタジオをあけるという、ビジネスを思い描いて、”起業を教えるネットワーク” が開催するピッチコンテストにでて50ドルの賞金をもらいました。
この子は、自分の母親が障害を持った事で、苦しみながらもダンスを通じ自信を取り戻すのを見て、障害を持つ子供たちがダンスを通じて友人を作る事ができるようにこのアイデアを思いついたそうです。この他にも、乳ガン患者を支援するために、ケーキをやいて、利益の10%を乳ガン財団に寄付するというもの、タトゥーを作るアプリの提案など、新聞にでている例ではビジネスアイデアの裏には子供ながらに心を動かされる何か別のストーリーがあり、それを原動力に事業計画を進めています。
ある意味、金銭的な欲がないので、まわりもつい支援したくなるのでしょう。
”起業を教えるネットワーク” が開催する今年度後半に行われるナショナルピッチコンテストでは1位の賞金は25000ドルになる予定です。

ABCネットワークの番組にシャークタンクというリアリティーショーがありますが(日本のマネーの虎のような番組)そのショーでは、資金調達をしたい、企業が数人の投資家の前でピッチをし、投資がもらえるか、どうかをきめます。とても面白い番組だとは思いますが、なんだかとても残酷なショーのような気もします。お金を出す変わりに、株式比率を60%にしろだとか、金利40%で貸す、とか、何万人の見ている前で、人生最大の(?)決定をしなければいけないかもしれない、このショー見てる方もドキドキです。投資家達の中には人相の悪い人もいたりして、まさにシャーク。人食いさめの餌食になってしまうのか?という現実的な怖さもあります。面白いのは、クッキーを作って売る人達やアクセサリーを作って売っている人にも同じように投資を受けるチャンスがあるということ。実際、ものすごい特許もある発明に、投資がこず、革細工のアクセサリーを作っている人が投資をうけたりすることもあり、投資家がお金の流れをどうみているか、というもわかります。ある投資家が、2〜3分のプレゼンで ”あなたのことが好きになれないから、投資しない” といっているのをみると、会ってすぐ人を魅了する力というのも、一つの才能だと思いますね。

スタートアップを支援する様々なオフィススペース

1999年にボストンの隣町であるケンブリッジ市にあるMITのすぐそばにできたCIC(ケンブリッジイノベーションセンター)は、MITからスピンオフした学生起業家のような人達や、会社をたちあげたばかりで、安い事務所スペースが必要な起業家、個人事業者でいっぱいになり、現在300社以上がそこのオフィススペースを使用しています。家賃は月額一人350ドルから1200ドルくらいまでで、CICには、1人でやっている会社から数十人規模の会社まで、様々あります。オフィスの形も、一人の場合は、ワンフロアーに大きな机があり、そこにイス一つで自分のスペース(事務所)のできあがり。もちろんクローズなオフィススペースもあります。実際、テック系のアプリやウェブサイトを作る会社はスペースがほとんどいりません。建物の中にはベンチャーカフェやヨガのコース、語学コースといった、クラブのようなものまであり、一大コミュニティーを築いています。

CICは世界で一番スタートアップが集まっているところですが、このような、オフィススペースで、もっと様々な種類のものがその後現在までにいくつも誕生しています。それぞれが製造販売している製品、顧客層によっても、創業者達がふさわしいと思うスペースも違うようです。
理由としては、企業同士が互いの経験を学び合える場になっているということであり、場合によっては、問題を抱えている会社が他の会社に助けてもらったり、社会的な側面もあるとのこと。起業するとはとても孤独なことなので、誰かと話ができたり、一緒に何かを共有できるということは、うれしいということらしいです。

高級オフィス街に去年9月にできたsnap suitesはもう少し、高級な顧客を相手にする場合にいいオフィススペースで、毎月の家賃が一人3000ドルもします。これだけの金額が払える会社なら、自分たちの事務所を構えてもよさそうですが、そうすると、セキュリティーの問題、清掃、90%は使われないだろう会議室とか余計な、コストやスペースが増えるそうで、それを考えるとレンタルオフィスでいい、という会社もあります。

また 去年の7月には ハードウエア(ロボットから補綴器具まで様々なもの)を作るために1億円相当の機械まで用意しているスペースを貸す、Boltもオープンしました。こうなってくると、オフィスを貸すというより、工場貸し?
クラフトビールメーカーのAeronaut Breweryは、2015年にはCoolship Labs という、発酵技術を使って作った商品を扱うビジネスを展開するスタートアップに特化したスペースをオープンするそうです。
これって、みそとか麹とか納豆とかでもいいんですかね?
なんか、とってもおいしそうな、ビジネスの匂いがします!

それにしても人口660万人しかいないマサチューセッツ州で、ボストン周辺にこれだけの、多種類のインキュベーターを含むオフィススペースが集中するのはすごいことです。。。
CICがボストン周辺の大学、研究所の起業文化を支えていること、そしてケンブリッジ市の発達に大きな役割を担っている事は、日々の新聞をよんでもよくわかります。このCICをたちあげたCEOである、Tim Row氏は以前は日本に住み、日系の企業に勤めていたこともある、日本語を大変に流暢に話すアメリカ人です。日本企業のOBともいえる、こういう方が、起業文化の本拠地アメリカで、それを支えているというのはとても面白く、うれしいことでもありますよね。

55歳からの起業

年齢があがるに従って、転職したくても、もしくは、解雇されて他の仕事をみつけたくても見つけられないという人が増えてきます。
1月8日のブルーンバーグの記事には、特に55歳をすぎると、転職市場も非常に厳しくなり、その頃解雇されてしまうと、なかなか次の仕事をみつけられず、起業する人が増えているという記事がありました。
Kauffman Foundation’s researchによると、1996年の統計では55歳〜64歳の間にビジネスを始めた人は14.3%だったのに対して、2012年には23.4%に増えています。理由の一つとしては、寿命がのびて、人が活躍できる期間がのびたというのもありますし、老後の蓄えを心配するというのもその理由だそうです。ベビームーマーたちは学歴も高いし、自信や意欲もあり、健康状態もいい人達が多い。

2011年の11月に発表されたサンフランシスコのEncore.orgの調査によると、44歳から70歳までのアメリカ人のうち1/4の人が、自分の会社、(プロフィットでもノンプロフィットでも)を持つ事に興味をもっているそうです。
リタイヤした人たちが多く住むフロリダで、最近労働省が提供したアントレプレナーシッププログラムには500人ほどの人が参加しましたが平均年齢は51歳でした。
50歳以上の人達は教育水準が高いですが、近年の解雇でもう自分は既存の会社の中では仕事を見つけられないと、感じています。
フロリダのアトランティック大学のリサーチパークにはテクノロジー系のビジネスインキュベータが入っており、そのうち30%ほどの会社が50歳以上の人達で運営されているそうです。

市場で自分にあった仕事が見つからないことを悪いこと、ととるのか、自分が独立するいいチャンスとみるのか、失業率が高い経済状況をビジネスを始めるには悪い時期とみなすのか、それともいい人材が市場にあふれていて雇用するにはいい時期、ととるのか、人は同じ立場にいてもどう状況をとらえるかでそれを、チャンスともピンチ、ともみなす事ができます。ただし、その状況をいいようにとらえられる為には、気持ちの上でも準備が必要。
人生は、不公平なものですが、万人に公平なのは、時間。歳は誰でもとります。大企業に勤めていようが、中小零細企業に勤めていようが、労働市場における”自分の商品価値”、というものを意識しなければならない社会になった、というのを感じますね。会社のせい、社会のせい、国のせいではなく、新しいことを始めるのなら、仕方なくではなく、喜んでしたいものです。

スタートアップがベンチャーキャピタリストを探すのは恋人を探すようなもの

ボストンには沢山のスタートアップがありますが、特にソーシャルメディア系の場合、ボストンで資金調達をするのは難しいようで、例えば、Facebook, Evernote,やDropboxのようにボストンで立ち上げても、資金調達できずカリフォルニアに移動する会社が多いです。モバイル系のスタートアップのCo Everywhereの資金調達に関しての話が1月5日 ボストングローブにありました。

Co Everywhereは資金を集める為に地元のベンチャーの200もの会合に参加しましたが、誰も”NO”ともいわないかわりに、”Yes“とも言ってくれない、“次に会う時は会社の役員も一緒に。”と、いわれるのですが、大抵その後上手くいかなくなってしまうそうです。実際、200もの投資家に会う前にあきらめてしまう会社が多いのですが、彼らは違いました。もともとは2012年にBlock Avenueという名前でスタートし、アメリカの情報とレビュー(レストランから学校まであらゆる範囲の)を集めることをゴールとしていました。ところが当初、資金提供してくれていたエンジェル達は、いったい人々がどのくらいそのサイトを見るのか懐疑的でした。そこで、彼らは方向転換します。アメリカの街角で聞かれる、会話やおすすめの店や写真(フェイスブックやツイッター、インスタグラムからの情報)を見せるアプリを作ることにしました。

ウェレズリーにあるベンチャーキャピタルの会社は毎年1000ほどの投資機会があってもそのうち投資するのは3〜4のスタートアップ、ほとんどの場合、 ”断る理由を探している” そうです。結局、そのマッチングはデートをして、互いに気に入る人を見つけるようなもので、会う人が見つかるまでデート続けるか、あきらめるか。。。結局、Co Everywhereは去年の秋に、600万ドルの融資をうけることができ、今後2年間に、数百万のスマホにアプリをいれてもらえるように頑張ることになりました。

実際、100以上のピッチを投資家の前でしなければならないことは起業家にとっては現実であるようですが、それでもいままでにいくつもの企業を立ち上げてきたボストンLEDライトカンパニーのTom Pincince氏は “起業家はビジョンを信じ、それが現実になると他の人たちが納得するまで働きかけることができる人です、そうでなかったら、沢山のイノベーションは起こらなかったでしょう。”

この、アメリカ人の ”ノーといわない、文化” 、私には非常に意外でした。私も、アメリカにきてから、本当にアメリカ人って ”ノー” といわない、とびっくりしているのですが、これはボストン人だから?それとも西海岸の人達は違うのでしょうか?
地元の人いわく、”我々はノーといわずに済むように、会話を続けることを学ぶんだ” ってまるで、日本人のよう?っていうか、今時、日本でも結構ちゃんとノーといえる、状況が増えてるように思うのですが。。。特に、イエス、ノーがはっきりしているヨーロッパからくると、ノーといわないからいいのかと思っていると、そんな事は全然なかった、という失敗が私にもあります。最近は、すぐに ”Yes” と言ってもらえない時はいい兆候ではない、と判断するようになりましたが。

とにかく、”Yes”といってもらえるまで、探し続ける、普通の神経なら、自分が間違っているのではないか、と思いますよね。自分を100%以上信じていないと無理です。
さあ、投資家をみつけるのと、生涯の伴侶を見つけるのと、どちらが難しいのでしょう?
ちなみに “独身アラフォー女性は果たして10年後に結婚できているのか?” という記事にある平成22年の国勢調査のデータによると、過去10年の統計からは、独身アラフォー女性が10年後に結婚している確率は1%未満らしいです。。。うーん、なんか悩ましいですね。

参考記事:ベンチャーキャピタリストとピッチイベント

ティーンエージャーの蝶ネクタイビジネス

昨日はテック関連のIPO、今日はティーンエージャーの裁縫ビジネスの話と幅広く、同じレベルでとりあげてくれるのがアメリカの新聞の面白い点だと思います。1月3日のボストングローブで若者の間で蝶ネクタイが復活している話です。

父親はMITの教授である16歳と17歳の少年達は、若い起業家がハイテク技術をつかったアプリ開発をしているというのに、自分たちの手と母親のミシンを使って19世紀の正装である蝶ネクタイを作っています。実際、プロムに使うのにうけているようです。
彼らのスローガンは、”ほどよく時代遅れ” であることであり、”いけてる紳士は蝶ネクタイをする” と思っています。実際、ポップスターからスポーツ選手までパーティーシーンで蝶ネクタイが復活しています。メンフィスでも蝶ネクタイを作る11歳の子供がテレビ番組でも紹介されました。

通常、布か寄付された昔のネクタイでつくるのですが、綺麗でない物のほうがよりいいとのこと、一つ作るのに20分かかり、もし自分に時給を払うなら今は一時間3ドル30セント、それでもバングラディシュの平均賃金の26倍とのこと。

彼らは自分たちが普通ではないことを自覚しています。
もちろん、21世紀のビジネスモデルとしては厳しく、現状は手作りサイトEtsy でも販売中、 これからネクタイとヘアバンド、それからデパートへの進出も目指しています。
このサイト、jackandjacksons.comの、蝶ネクタイの結び方のビデオをみると、今時の子が作ったサイトだなあと、感心してしまうのですよね。(注:このビデオ出てこない場合もあります)できてる物が決して上品とか、高級っていうのではないのですが、ほとんど母親目線。僕たちがんばって〜と応援したくなってしまいます。(笑)プロムの為に、一生懸命手作りって、実は今も昔も変わらないんだなあ、と Pretty in Pink を思い出してしまう、あ、すいません、誰も知らない?

えーっと、実際、ボストンで初めて、呼ばれたレセプションのドレスコードが、女性がロングドレスで男性がタキシードに蝶ネクタイでびっくりしたのを思い出しますが、ある意味、ヨーロッパよりずっとフォーマルなボストン。アメリカの高校はプロムがあるので、ティーンエージャー達はおしゃれをしなければいけない(できる?)機会があります。

一方、ビジネスシーンではますますネクタイを見かけなくなり、カジュアル一辺倒。どこかでフォーマルに装うことで人はバランスをとるのでしょうか。男性のほうが凝り性の方が多いので、はまると意外といけるのかもしれませんね。