コーディングを習うと数学の成績がよくなるのか?

この1ヶ月くらいの間にいかに、子供達にコーディング(プログラミング)を習わせるかという記事をいくつもみています。それは教育現場からの視点だったり、労働市場における視点からだったりするのですが、どっちにしても、市場がプログラマーを必要としていることには変わりはないのかな、という感じです。この流れはしばらく、続きそうです。

12月16日ボストングローブ紙

オバマ大統領が、子供達に、”携帯電話で遊ぶだけでなく、プログラミングをしてごらん!”と、プログラミング(コーディング)を推奨するプロモーションビデオで語っている。code.org というNGOがオバマ大統領や、その他有名人達が、子供達にコンピュータサイエンスのクラスをとることがどれだけかっこいいことなのか、伝えているのだ。アップルストアもこれを後押しして、無料のコーディングワークショップを行った。アメリカ国内でのコンピュータリテラシーを改善する必要だという認知度をあげて、1時間のコーディングの授業をしたことで、次のザッカーバーグやビルゲイツが増えるかといえばそういうことでもないだろうが、大学でプログラミングのクラスをとる人が増えて、卒業した時に、需要の高いスキルをえることができるかもしれない。

それ以上に、小、中学校である種のプログラミングスキルを学んだ子供は標準の数学のテストの点数が改善した。テック関連の教育者は現在どの、プログラミング言語と学校のカリキュラムが有効なのか国内の公立学校に普及させる為に調べている。

ブリガムヤング大学のライト研究員がユタ州の中学校で課外授業として週2回プログラミングの基礎を教え、数ヶ月後、代数で使われる変数や関数の分野では明らかに点数があがったという結果を出している。
ライト氏は2014年からコンピューターサイエンスのプログラミングを小学校から高校まで教えることになったイギリスのように、技術に対する恐れを減らし、子供たちに若い時から慣れさせたいと思っている。
しかし、アメリカの場合、州によってカリキュラムが違うので難しいと思われる。全米の90%の学校ではプログラミングの授業を提供していない。

マイクロソフトの元コーダーで、現在ハーバード大学で代数教育に関する博士課程をしているエマニュエル シュナンツアー氏は、“プログラミングが子供達が問題解決をしたり、抽象的な考え方をするのに役立つということを証明しようとしてきた歴史があります。そして研究では満足のいかない結果におわっています。”

シュナンツアー氏はブートストラップと呼ばれる、代数と幾何の原則をビデオゲームの為にコードを書く事で、12歳から16歳の子供たちに教えるカリキュラムを開発した。マサチューセッツ州の7つの学校と全米で数十校が、代数や代数の準備コースとして8、9年生(中学2、3年生)の数学の授業に、この20時間のコースを取り入れている。

ライト氏、シュナンツアー氏はプログラミングの授業をとる前と、とった後に数学の成績がどう変わるかを調査している。
子供達にプログラミング言語を教えて、魔法のように数学のスキルがあがるということではない。プログラミングにおいて習った機能が、どのように数学の授業でも使われるのか、先生ははっきりと指摘しなければならない。

そして、本来それはとても複雑な過程である、なぜなら、あるプログラミング言語では、“x=x+1”というコードがあり、それは代数で考える“x=x”という概念とは、違うし、それに、高校の数学の先生はプログラミングを教える技能をもっていない。

ブートストラップが使うプログラミング言語は数学の方程式と一致するようになっておりカリキュラムはNGOのウェブサイトで無料で手に入る。ただし、学校は先生を訓練する為のワークショップには費用を支払わなければいけない。
シュナンツアー氏はこの6年間調査してきたが、もっと沢山の数の学生の調査をする必要があるという。

日本のプログラミングの授業はどうなるんでしょうか。英語を習うように “言語” として、とらえるのでしょうか、それとも、アメリカの例のように ”数学” という観点からアプローチするのか、それとも、ワードやエクセルを習うようなカテゴリーで習うのか。それによって結果もずいぶん違ってきそうです。

注:この記事ではコーディングと、プログラミングを同じ意味で使っています。

参考
代数はなぜ世の中に必要なのかを、コンピュータープログラミングのコースで教える取り組み
ブートストラップはダウンロードもできます。
http://getbootstrap.com/

高校の教科書のデジタル化

ニューヨーク州のホワイトプレインズの高校で、教科書を全てデジタル化したという記事が12月23日 ボストングローブにありました。
アメリカの教科書は、分厚く、重いので、教科書を家に持って帰らなければいけない場合は、かばんがずいぶん重いことになりますし、教科書は学校から借りるというスタンスなので、自分の所有物ではありません。

この学校はカトリックの男子校でデジタル化に伴い、宗教の本以外の学校で使用する教科書は、全てクラウド内の書庫にあります。学校が支払う費用も600ドルから150ドルになりました。(1人あたりの費用だと思います)

本のデジタル化にふみきったのは、教科書の重さやコストが主な理由ではなく、そのほうがよりよく学習できるからだそうです。
例えばオンラインの歴史の本では様々な歴史上の人物に関するビデオがのっていますし、英語は書いた作文に点数をつけてくれたり、必要であれば、例えばコンマの使い方のワークシートを提供してくれたりします。バーチャルな実験室もあります。もちろん、デジタル教科書は自分のものなので、書き込みもOKですし、去年の復習もできます。
この高校は全米で唯一、全ての学生の為に、全ての教科のデジタル教科書化をすすめた学校だそうです。
歴史の先生は、教科書が充実することで、授業ではより、討論や分析ができるといいます。学生も、行き帰りのバスの中や、どこでもイヤーフォンをして、授業をきくことができると、好意的に受け止めています。

実際、マサチューセッツの高校でも、デジタル教科書はずいぶんとりいれられていますが、これからは完全デジタルの方向性にあるのでしょうか。全生徒にiPadを用意する高校もあらわれました。
デジタル教科書は学生は、ラップトップか、タブレットを使用することになり、費用の面で考えると、安くなるわけではないようです。
必要な情報が、全て読めば、もしくはビデオをみればわかる、となると教師の力というのが、知識を教えるより、ますます、
生徒達がより深く学べる枠組みつくりや、知識を使ってどういう理論展開をしていくのか、という応用力という側面にうつっていくのでしょう。

個人的には、新学期にもらう新品の教科書や、ページをめくる時の紙の手触りが好きだったんですよね。オンライン上の本ってどうも、立体感がなくて、五感を刺激しない、なんて感じていますが。。。

第三の目は手術であけられるのか?

高校生には全員iPadを支給する学校や、中学では数学の能力をあげる為に、コンピュータプログラミングのコースに、ワードやフォットショップなどのソフトウエア教育も義務化する学校が続々と増えているようです。学校教育がどんどん、テクノロジーに比重をおくほうに傾きつつあります。

そんな中、ローザンヌ大学の生物学、ポリティカルサイエンスの教授と、MITの生物工学の教授が、人の脳の研究について開いたイベントに参加しました。
ローザンヌ大学の教授は、脳科学の歴史について、哲学とからめた話をし、MITの教授はfMRI(脳の画像解析がこれでできるようです)による、最新の脳の研究方法や、ニューロサイエンスの研究について、話をしました。

一応、講義が終わって質問時間になり、あるハーバード大学の中国人の学生が、こんな質問をしました。

学生:“私の祖先は200年ほど前、第三の目があいていました。でも、その後閉じてしまって、私にも絶対に、細胞のどこかにその痕跡があるはずなのです。
それを発見できますか?目をあけることは手術で、できるのでしょうか?”

会場、どよめき。。。

教授:“瞑想とか、ありますけど。。。。手術とか無理でしょうね。”

察するに、彼は自分の第三の目をあける為に、第三の目を科学的に解明するために、必死に勉強をしてきたのではないかと思います。でもどこかで、科学を超えた何かがあることも、理解している、だから、彼は、自分のマスターです、という気功(だと思います)の先生を一緒につれてきていました。科学的な理論と、哲学、思想が交差する点を彼なりに探っているようなのですね。

もしかして、科学的な、テクノロジー的な教育が増えれば増えるほど、実は、人は思想や哲学的な教育も同じ位のバランスで必要になってくるのかもしれない、と思ったのでした。

失業率を改善させる可能性のある職業訓練制度

12月15日のボストングローブ紙によると、マサチューセッツ州の失業率がいまだ7%をこえているのにも関わらず、特にライフサイエンス、ヘルスケア関連の産業においては、大学の学位があるなしに関係なく、求人数が多く、人材がたりていないということで、労働市場において、需要と供給のバランスがあっていない状態が続いているという、との報告がありました。2008年から比べてみると、ヘルスと教育関連で72700件、求人が増えているのに対して、製造業では42700件求人が減っています。

求人が多いからといって、昨日まで工場で働いていた人達、1万人を新しく教育し直して、看護師として働かせるというのは現実的ではありません。また、子育てでキャリアを中断していた人たちが、いざ、働きはじめようと思っても、ここ何年かで、必要とするスキルが違ったり、コンピュータースキルが変わってしまいそのままでは、仕事がみつからない、という状況になっています。

そして、この需給バランスがあわないのは、地理的要因も考えられるようです。例えば、失業率自体が低い場所で求人が増えるのに、失業率が高い場所では求人がふえないということもあるそうです。ノーベル賞受賞者のMITの経済学者ピーター ダイアモンド氏によると、需給のバランスが合わないということは、いつでもあり得ることですが、大切なのは、小さなエリアでみるのではなく、マサチューセッツ州とかアメリカ経済全体で見た時で、経済が脆弱で求人が十分ではないと、警鐘をならしています。

しかし、実は本当の問題は、大きな会社、特に製造業が見習い制度のような職業訓練やインターンシップ、その他のプログラムによって職業教育に投資しないからだ、というのが新聞の主張でした。

ちなみに、ヨーロッパで経済が非常に上手くまわっているスイスにおける、失業率は3%ほどになるのですが、今、高い失業率に悩む各国がなぜ失業率が軒並み高い、ヨーロッパの中であの小国が、上手くいっているのか、その秘密を探りにきているようです。

理由の一つとして、その教育システムが大きな役割を果たしているようです。大学入学の条件である、高校卒業試験に受かる生徒は約19%。要するに、5人に1人しか大学にはいかない、では他の人は何をしているかというと、15歳くらいから職業訓練に入ります。15歳には自分はどういう道に進みたいのか、ある程度の目安をつけておく必要がでてきますが、15歳から18歳まで、職業訓練に入り、その間、自分の契約した職場で働きながら、学校にも通い勉強もしていきます。そして18歳で卒業すると、一応、その仕事のプロとして認められるのです。(もちろん、この時点でやっぱり自分は大学にいきたいと思えば、また勉強して高校卒業試験をうけることもできます)そして、初めて、今度はプロとして、本格的に労働市場に参入します。

この制度の特徴は、当然、景気のいい産業は沢山の学生を受け入れ、必要な人材を作っていきますし、衰退している産業は、新しい人材を育成しにくいということで、かなり、経済市場に敏感に反応する点です。景気がある程度悪くなると、この職業訓練をサポートしてくれる、企業が減る傾向にはあるのですが、それでも、産業と学校が強く結びついて、将来の為の人材投資という位置付けで、若者を支援しています。又、その教育のなかでは当然、将来例えばパン屋として、独立したり、起業したりするかもしれないことをふまえた教育もなされていきます。18才で卒業したのちも、また、必要に応じて、教育をうけて、スキルアップやキャリアチェンジをする道もあります。

この制度、明かに企業にとってもローコストになります。市場に入ってくる若者達はすでに、高等教育か、職業訓練をうけているので、企業で高い給与を払って人的訓練をする必要がないのです。 日本の終身雇用のように、企業が時間をかけて教育してくれればいいのですが、転職が増え会社もスキルのすでにある人を優先的にいれるとなると、スキルのない若者の失業率があがるという事態になってしまいます。この制度、日本のニート問題も解決してくれそうです。

ドイツ(大学進学率がのびていますが)、オーストリアもこのシステムを取り入れおり、このシステムが上手く機能している国では失業率が低いといえるようです。

タフツ大学が取り組む起業教育

タフツ大学が、アントレプレナーシップに力を入れ始めた、という記事が、11月11日のボストングローブ紙にあります。

1年ほど前に、起業リーダーシップ学部長は代わり、10%の学部生だけが取り組んでいたこのプログラムをもっと学生の中に広めようとしています。賞金10万ドルのタフツのビジネスプランコンペへの申請件数は18から109に増えました。

Tufts.ioとよばれるこのアントレプレナーシップコースは、アカデミックな講義と、メンターによる、指導でなりたちます。そこでは学生がどうやって起業をするかを習います。現在、世界で重要な製品は大学生くらいの創始者達が作ったものが多数あり、学生にビジネスがすぐにでも始められる可能性がある事を示しています。このコースでは、“幸福が成功につながる” ということを教えたいと、アメリカンアパレルの創始者でTufts.ioで教えているダブ・チャーニーはいいます。ちなみに、彼もタフツ大学の学生の時に、アメリカンアパレルを始め、中退しています。

そして、タフツのスタートアップを支援する為に、タフツベンチャーファンドがあります。
タフツ大学は国際関係論や、外交政策で有名ですが、タフツの目指しているものは、その強みに経済的な知識をブレンドすることだそうです。MITスローンスクールやハーバードビジネススクールのような、MBAスクールを作るのではなく、タフツのもっている強みをいかした生産的なエコシステムを作ることが目的です。

起業リーダーシップ学部が、大学内を横につなげているという感じになるのでしょうか。
アカデミックなことをいかにビジネスにつなげていけるか、という実践的なプログラムになるようです。

理系の学生が、テック系の製品を作って、イノベーションをおこす、というのは一つの道ですが、文系の学生だって、サービスに特化して、理系の学生の技術的なサポートがあれば、イノベイティブな商品はできそうです。また、国際関係論を学ぶ学生なら、世界の問題に焦点をあてた、社会起業的な分野のアイデアもでてきそうです。総合大学のいいところは、様々な学部があるので、それを上手く横につなげるパイプがあれば、無数のアイデアを生む可能性がでてくることでしょうか。学生も、自分の勉強が就職活動の為だけでなく、誰かの役に立つ事がわかれば、きっと学習意欲がわくと思います。

こういった方向性の、起業教育なら日本の大学もやれそうな気がします。