失業率を改善させる可能性のある職業訓練制度

12月15日のボストングローブ紙によると、マサチューセッツ州の失業率がいまだ7%をこえているのにも関わらず、特にライフサイエンス、ヘルスケア関連の産業においては、大学の学位があるなしに関係なく、求人数が多く、人材がたりていないということで、労働市場において、需要と供給のバランスがあっていない状態が続いているという、との報告がありました。2008年から比べてみると、ヘルスと教育関連で72700件、求人が増えているのに対して、製造業では42700件求人が減っています。

求人が多いからといって、昨日まで工場で働いていた人達、1万人を新しく教育し直して、看護師として働かせるというのは現実的ではありません。また、子育てでキャリアを中断していた人たちが、いざ、働きはじめようと思っても、ここ何年かで、必要とするスキルが違ったり、コンピュータースキルが変わってしまいそのままでは、仕事がみつからない、という状況になっています。

そして、この需給バランスがあわないのは、地理的要因も考えられるようです。例えば、失業率自体が低い場所で求人が増えるのに、失業率が高い場所では求人がふえないということもあるそうです。ノーベル賞受賞者のMITの経済学者ピーター ダイアモンド氏によると、需給のバランスが合わないということは、いつでもあり得ることですが、大切なのは、小さなエリアでみるのではなく、マサチューセッツ州とかアメリカ経済全体で見た時で、経済が脆弱で求人が十分ではないと、警鐘をならしています。

しかし、実は本当の問題は、大きな会社、特に製造業が見習い制度のような職業訓練やインターンシップ、その他のプログラムによって職業教育に投資しないからだ、というのが新聞の主張でした。

ちなみに、ヨーロッパで経済が非常に上手くまわっているスイスにおける、失業率は3%ほどになるのですが、今、高い失業率に悩む各国がなぜ失業率が軒並み高い、ヨーロッパの中であの小国が、上手くいっているのか、その秘密を探りにきているようです。

理由の一つとして、その教育システムが大きな役割を果たしているようです。大学入学の条件である、高校卒業試験に受かる生徒は約19%。要するに、5人に1人しか大学にはいかない、では他の人は何をしているかというと、15歳くらいから職業訓練に入ります。15歳には自分はどういう道に進みたいのか、ある程度の目安をつけておく必要がでてきますが、15歳から18歳まで、職業訓練に入り、その間、自分の契約した職場で働きながら、学校にも通い勉強もしていきます。そして18歳で卒業すると、一応、その仕事のプロとして認められるのです。(もちろん、この時点でやっぱり自分は大学にいきたいと思えば、また勉強して高校卒業試験をうけることもできます)そして、初めて、今度はプロとして、本格的に労働市場に参入します。

この制度の特徴は、当然、景気のいい産業は沢山の学生を受け入れ、必要な人材を作っていきますし、衰退している産業は、新しい人材を育成しにくいということで、かなり、経済市場に敏感に反応する点です。景気がある程度悪くなると、この職業訓練をサポートしてくれる、企業が減る傾向にはあるのですが、それでも、産業と学校が強く結びついて、将来の為の人材投資という位置付けで、若者を支援しています。又、その教育のなかでは当然、将来例えばパン屋として、独立したり、起業したりするかもしれないことをふまえた教育もなされていきます。18才で卒業したのちも、また、必要に応じて、教育をうけて、スキルアップやキャリアチェンジをする道もあります。

この制度、明かに企業にとってもローコストになります。市場に入ってくる若者達はすでに、高等教育か、職業訓練をうけているので、企業で高い給与を払って人的訓練をする必要がないのです。 日本の終身雇用のように、企業が時間をかけて教育してくれればいいのですが、転職が増え会社もスキルのすでにある人を優先的にいれるとなると、スキルのない若者の失業率があがるという事態になってしまいます。この制度、日本のニート問題も解決してくれそうです。

ドイツ(大学進学率がのびていますが)、オーストリアもこのシステムを取り入れおり、このシステムが上手く機能している国では失業率が低いといえるようです。

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