同窓会の役割
また大きな役割を果たしているのが同窓会です。ここの大学をでればなんとかなるというのは、直接仕事がもらえるからということよりも、その卒業生のネットワークに入ることで、通常コンタクトしにくかったルートを使って人材紹介を受けたり 役にたつ情報をもらえたりといったことができるからです。大学側にとってみれば、卒業生とのリンクが就職率を上げることになったり、寄付金を募るという資金調達の面からも 同窓会の存在を重要な位置付けとみており、卒業生とのコミュニケーションを大切にしています。この部分を強くすることは大学のブランディングを強化することにも通じます。
イノベーティブ人材を教育する素地
アメリカの大学はダイバーシティーを重要視して、学士レベルに入学する時も人種や性別のバランスだけでなく、学生個人の色々な面を総合的に見て勉強だけでなく、部活や学内での活動、学校外での活動、エッセーでは物の見方や考え方を考慮します。大学に入る前の18年間、例え同じ学校に通っていたとしても、人によってはやっていることは随分変わってきます。個人レベルでも相当違うのに学部単位になれば相当なバリエーションができます。さらに大学院、例えば、MBAに入ってくる学生は様ざまでビジネスを専攻していた人もいれば、エンジニア、医者、歴史を勉強してきた人、軍隊の人、公務員、大学に行かないで高校卒業後に仕事をしてきた人等あらゆる人が世界中から集まります。そういう掛け合わせが新しい発想を生んできます。
アメリカの大学の問題点
近年は特にアメリカの学費が高騰しており、外国人としてアメリカの大学で学ぶ費用を考えると敷居が高くなってきました。高ランキングの大学も低ランキングの大学もどっちにしても同じくらいの学費をだすなら、よりレベルの高い学校にいきたい(いってもらいたい)ということで、高校レベルからボーディングスクールに行かせる、もしくは母子家庭のように子供と母親がアメリカにいるというパターンも増えています。一部私立の高校は外国人を受け入れることで高額な学費を得て小規模な運営をすることから外国人が増え、語学学校化しているともいえます。大きな問題は高額な学費を払って卒業したとしても、就職が保証されているわけではなく、労働市場で必要とされている人材と、教育機関が教育する人とのとの間にギャップがあることです。そして1980年代から1990年代に生まれたミレ二アル世代はその前の世代に比べずっと多くの起業教育をうけてると言われているものの、実際起業している人たちは減っているといいます。それはこの世代はそれ以前の世代よりも学生ローンを抱えており、起業するどころではないという現実があるからのようです。
欧と米の対比 参考3
ヨーロッパの大学(ドイツ語圏)vs アメリカの大学
*ここでいうヨーロッパの大学は主にはドイツ、スイス、オーストリアというドイツ語圏の大学を指します。
アメリカの大学は学生の勉強面だけでなく、就職やインターンシップ、場合によっては起業といった将来的にしたいことに対してまでも支援をします。学生側も高い学費を払ったことで学生ローンを返したりしなければならないので必死です。アメリカの大学の形は非営利団体ですが、費用は賄わないといけないので運営の考え方は普通のビジネスと変わらず、一般のサービスプロバイダーに近いです。
一方、ヨーロッパの大学はほとんど授業料がかからなく、(もしくは非常に安い)公共性が高く 、勉強したい人がいくところ、すなわち自分で考え、動く、という前提があります。ブログでも何度も指摘している通り、高校卒業資格のレベルが違うので、ヨーロッパの学士は3年で終了(いわゆる、教養課程の部分は高校までに終了してしまいます。)、アメリカや日本の学士は4年で終了するプログラムが通常組まれています。
ヨーロッパの学校の仕組みは、学士レベルでも大学では専門性がはっきりしてます。一方、アメリカだと 専攻しても途中で変えることや、はじめは何を専攻するつもりか明確でなくても後から変えるということが可能です。それから新入社員に 会社が手厚い研修をしてくれるわけではないので(一部の企業、もしくはケースを除いては)ヨーロッパの大学も、やはりインターンの経験等がないとその後に仕事を見つけるのは難しくなってきます。しかし、大抵が個人的にインターン先を探すことになりそのプロセスも自立して行うことが期待されます。
一方、ドイツ語圏の場合大学を出なくても専門職として自立、起業する道は職業訓練制度にあります。職業訓練制度が充実していることから、高校まで普通にでて専門学校にいったり、中学を卒業してからそのまま職業訓練学校にいく人もまだ多くいます。職業訓練の利点は、学校にいきながら、実務を実際の職場で同時に学ぶ点で、受け入れ先がなければつきたい職業だとしても働く場がありません。15歳で自分がこの先3年間お世話になるであろう職場に場合によっては数十通のレターをかき、社会に出て行くことを通じて責任感が生まれてきます。企業側もそうやって、必要な人材を育てていく役割を担うことで、労働市場における需給バランスが保たれます。そして最短で18歳には1人前になり、場合によっては3年後には独立することもできるようになりますがそれでもまた他の職業や勉強をしたければそれからでも遅くはありません。そうやっていくつかの職業や学歴を重ねていくことであらたなキャリアパスができてきます。
−考え方の比較−
どちらがいいというより、何を目指しているかでもかわってくるとはいえます。国家資格(職業によっては国だけでなく州単位でも資格が違うものあり)が必要なようなものに関してはどの国のどの言語で学ぶかということは大きな問題点になってきます。
ただ職種によっては国際的にも組み合わせることも可能です。職業訓練の道をいったからといって、大学院やMBAにいけないか、というとそうではないです。実際、大企業の重役には大学を出ていない人もまだまだ多くいますし、中小企業を運営している人は特にそうです。職業訓練の後からその道の専門家として、仕事に従事し、アイビーリーグのビジネススクールに入った人を私自身何人も見ていますし少なくともビジネスの分野では経験が勉強以上に役に立つと、いえそうです。一方、大学(院やビジネススクールにいったからといって、必ずしもすぐ仕事がみつかる、もしくは給与があがるという保証もありません。それどころか、中小企業を立ち上げて院卒の人より、ずっと給与的には稼いでいる人たちも多くいます。
これはあくまでも個人的な見解ですが、ドイツ語圏の職業訓練学校からアメリカの大学院、特にビジネススクールに入ってくる人たちはもともと持っている専門性がとても高く、実務能力が高い人が多いので 専門の深さに外国に出ることで得られる視野の広さが重なり合って、その後の伸びもかなり大きいと見受けられます。やはり重要なのはしっかりした土台を持っていることのように思います。専門能力がしっかりしていると、たとえ英語に多少難があったとしてもエンジニアでも芸術でも専門職にはその世界での言葉があるので言語の壁を超えやすいです。
参考記事:
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